【医学部編入】生命科学講義・DNAの修復機構② ~CRISPR/Cas9システム~
お久しぶりです。本業(国試勉強)の方がさすがに余裕なくなってきました。
とはいえ今後も、不定期ながらもほそぼそ更新していけたらなと思います。
さて、本日の話題はCRISPR/Cas9(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats/CRISPR-ASsociated proteins 9)です!
読み方は「クリスパー・キャスナイン」。イマドキ知らなかったらちょっとヤバイやつですね。ノーベル賞候補ともいわれている科学技術です。
それでどういう技術なのかというと、一言でいえばゲノム編集です。
非常にざっくりとしたワードではありますが、一般的にそう表現されます。
もうすこし具体的に言うと…
ゲノム編集=特定の遺伝子のノックアウト・ノックインができる
ということになります。
今までそこそこ難しかったノックアウトが非常に簡単にできるようになり、応用法は無限大です。
逆に言えば、ヒトを含む遺伝子改変生物が容易に作れるため、倫理的な問題もはらんでいます。
例えるならば、僕あんまり詳しくないのですが、ガンダムで出てくる「コーディネーター」というやつですね。
それで、じゃあどうやってゲノム編集するのかっていう話ですが、まず以下の図をご覧ください。
よくこのような模式図で説明されます。
もともと細菌が持っていた免疫システムを応用したもので、本来は細菌の体内に入ってきた外来DNAを破壊するための装置だったんですよね。
その本体が、図の白い雲みたいに描かれている"Cas9"という名のタンパク質で、これが「特定のDNA配列を認識」して配列中のDNAを切断します。
それで、この切断するまでの過程でいくつかポイントがあります。
一つ目が、どうやって「特定のDNA配列を認識」するか?です。
それを可能にする重要な要素として"guide RNA"(sgRNAと略したりします)なるものが存在します。Cas9はそれと相補的な配列を認識します。
そしてもう一つが、guide RNAのすぐ隣に存在する"PAM配列"(図中オレンジの3塩基)です。Cas9はPAM配列を目印にして、その近傍のDNAを切断することができます。
そしてここからが重要です。
このCas9による切断は二本鎖いっぺんに切断するため、鋳型がありません。
ですので、前回の記事でもご紹介した通り、多くの場合「非相同末端結合」により修復されます(図中左のルート)。
この修復機構は非常にアバウトなので、高確率で塩基の挿入や欠損が起きてしまうわけですね。
その結果、切断された部位がコードしていた遺伝子はつぶれてしまいます。すなわちノックアウトされるわけですね。
また、ドナーDNAとして、切断部位周囲に相補的なDNA配列を予め導入させることによって、「組換え修復」を起こすこともできます。
それによって任意の配列を挿入することができ、遺伝子を一部改変したり、導入したりできます。すなわちノックインですね。
上記のようなメカニズムで、CRISPR/Cas9はこれまでの技術と比べ容易にゲノム編集することができます。
ほんとすごいですね。
さて、ではこれを実際に、例えば培養細胞のある遺伝子のノックアウトを行おうとすると、具体的にどのような手順を踏むことになるでしょうか?
それを以下、箇条書きで示していきます。
CRISPRのプラスミドを購入する(ふつう薬剤耐性遺伝子もコードしてある)。
↓
ノックアウトしたい遺伝子中のある配列に相補的な配列をプラスミドの所定の箇所にインサートする(guide RNAになる)。
↓
培養細胞にプラスミドをトランスフェクションする。
↓
薬剤セレクションをする。
↓
セレクションされた細胞でシークエンスorウエスタンブロッティングをする
↓
ノックアウト細胞が存在することを確認する(バンドが薄くなってる等)。
↓
クローニングする(細胞一個一個にして、そこから増やす)。
↓
細胞が増えてきたら再びウエスタン等でチェックする。
↓
ノックアウト(バンド消失)を確認する。
↓
ノックアウトにより生じると予想される変化を何かしらの実験でとらえる。
↓
以後の実験に用いる。
実験目的によって若干の違いはあるにせよ、だいたいこのような流れになるかと思います。
はい、今日の内容は以上になります。
まあCRISPRはホットとはいえ、出題するとなるとどこが問われるか正直予想しづらい感はあります。
なので、ひとまずこの記事で扱った事項は把握しておいて、それで対応できなければ仕方がないというスタンスでいくしかないでしょう。
では、次回はセントラルドグマあたりを勉強していきたいと思います。