【医学部編入】生命科学講義・DNAの複製① ~DNAポリメラーゼ~
どうもこんにちは、タマころです。
第2回模試を作っていた関係で、こちらの更新が滞ってしまいました。
ぼちぼち分子生物学の本筋に入っていきまして、今回からはタイトルにもある通りDNAの複製と修復機構について勉強していきます。
DNA複製と一口で言ってもいろんな見方があるかと思いますが、この項目では特に「ポリメラーゼ」「複製フォーク」「テロメア」という3つの単語に焦点を当てていく予定です。
それでは順番に、本記事では「ポリメラーゼ」について勉強しましょう。
○○依存性○○ポリメラーゼ
この表現、常識だと思う人にとっては常識なのですが、「?」な方もなかなか多かったりします。
知ってるよって方はこの項は飛ばしてください。
まず、○○にはDNAかRNAのいずれかが入ります。なので組み合わせとしては
DNA依存性DNAポリメラーゼ
DNA依存性RNAポリメラーゼ
RNA依存性DNAポリメラーゼ
RNA依存性RNAポリメラーゼ
の4種類が考えられます。
それで、前半の○○依存性というところは、つまるところ"鋳型は何だ"ってはなしです。
そして後半の○○は、"その鋳型から何を合成するのか”ってはなしです。
わかると簡単でしょう?
なお、本記事での主役は一番上のDNA依存性DNAポリメラーゼになります。
じゃあ後の3つは何かというと...
DNA依存性RNAポリメラーゼは、転写にかかわるポリメラーゼです。つまり、mRNAを合成します。
RNA依存性DNAポリメラーゼは、いわゆる逆転写酵素ってやつです。HIVウイルスが持っていることで有名ですね。
RNA依存性RNAポリメラーゼは、RNAウイルスが持っているものになります。RNAウイルスは自身のゲノムを複製するために自前でポリメラーゼを持っていて、そのため多くのRNAウイルスの複製の場は細胞質になります(インフルエンザウイルスは例外的に核内でゲノム複製を行う)。
DNAポリメラーゼの校正機構
DNAポリメラーゼの複製エラー率というのは10^(-9)から10^(-10)程度で、ヒトの全ゲノムが3×10^(-9)塩基ほどであるから、一回の複製で一個の塩基を間違えるかどうかというレベルの正確性です。
実際には、その間違って複製されてしまった塩基も様々な修復機構によって校正されるため、本当の複製エラー率はもっと低くなります。
上記の値は"DNAポリメラーゼ"そのものの校正機構によって得られる数値となります。
ちなみに、ウイルスが持っているようなRNAポリメラーゼのエラー率は10^(-5)程度で、DNAポリメラーゼがいかに正確かがわかりますね(ただウイルスの場合は、その不正確性を逆に利用して多様性を生んでいます)。
さて、その校正機構というものなんですが、そのメカニズムはどのようなものでしょうか?
まず、前提としてDNAポリメラーゼは5'→3'の方向に塩基を付加(重合)していきます。反対には進むことはできません。
それと同時に、DNAポリメラーゼには通常の進展(重合)反応の他に、塩基を除去する3'→5'方向のエキソヌクレアーゼ活性というものを有しています。
これは、酵素活性としては常に働いているものなんですが、普段は通常の進展方向の反応速度がかなり速いので、結果的には塩基を除去する反応は見えないです。
では、もし間違った塩基を付加してしまうとどうなるのでしょうか?
そのときは、5'→3'向きの進展反応は事実上そこで停止してしまうのです。化学的にいうと、反応速度が著しく低下します。
そうすると、普段は遅すぎて見えなかった3'→5'エキソヌクレアーゼの反応速度が勝ります。
その結果、晴れてミスマッチ塩基を除去することができ、DNAポリメラーゼは気を取り直してまた正しく進展反応を進めていくのです。
まあいろいろ言いましたが、とにかく大事なことは、DNAポリメラーゼは"エキソヌクレアーゼ活性"を有する、ということでしょうか。
では、次回は2つ目のキーワード「複製フォーク」について学んでいきましょう。