再受験・学士編入で医学部を目指そう

20代後半、男。医師・獣医師。 医学部受験情報の発信や編入向けの生命科学の解説をしていきます。2018年3月31日より医学部編入受験生のためのウェブサイトMediTransを立ち上げましたhttps://www.meditrans.solutions

【医学部編入】生命科学講義・シグナル伝達① ~総論・細胞内受容体~

どうもお久しぶりです、タマころです。

いやぁ、前回の講義から1ヶ月も経ってしまった。。。猛省


さて、言い訳をしても仕方がないので早速内容に入りますが、今回からはシグナル伝達についてざっと勉強していきたいと思います。


一言でシグナル伝達と言いましても、まあ実際はいろいろありますよね。
なかなか網羅的にみていくことは難しいのですが(僕もそんなに詳しくないですし)、ここでは超有名どころといいますか、比較的試験に出そうなものだけを取り上げていきます。


まず、シグナル伝達というのは何かというと、ある細胞が外部の状況(情報)を受け取ってそれに応じて適切に反応するためのものです。

外部の情報というのは結局、細胞の周りに存在する物質を指すことになります。細胞が自身の周りにある物質に対する受容体を持っていればそれらは結合して、その結果細胞は情報をキャッチできるわけですね。


それで、受容体というのは大きく3つの種類にわけられます。それぞれ簡単な説明も付け加えました。


細胞内(核内)受容体・・・リガンドは脂溶性。多くはステロイド受容体

Gタンパク質共役型受容体・・・いちばんメジャー。シグナル伝達とえばこれ。

チロシンキナーゼ連結型受容体・・・ほぼほぼインスリン受容体が問われる。


はい、まずこの3種類の簡単な違いをしっかり意識して、その上でステロイド=細胞内(核内)受容体!インスリン=チロシンキナーゼ受容体!と一対一対応させましょう。

ステロイドが細胞内受容体は常識だとして、インスリンがチロシンキナーゼ受容体というのは知らない人は知らないですよね。それゆえ差が出ます。

あとのリガンド・受容体の関係はたいていGタンパク質でしょうか。
まあでも、Gタンパク質と一口で言っても種類がいくつかあるのがやっかいですね。でもその問われ方は結構ワンパターンな気がします(場合によってはマイナーな出題があるかもしれませんが、そしたらみんな分からないので結局差つきません)。


本記事ではステロイドホルモン受容体について扱って、あとの2つは次回以降に回したいと思います。



"ステロイド" 名前はよく聞くと思います。皆さんはこの単語に対してどのようなイメージを持っていますか?

おそらく、どちらかというと悪いイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。

これは、ステロイドという薬剤に副作用が多いことに起因しますが、特に日本での嫌われようは異常です。

その昔、夜の某報道番組においてステロイドの害悪についての特集が組まれたことがあるらしく、それによって日本人のステロイドのイメージは地に落ちたということのようです。


さて、そんな話はどうでもよいのですが、そもそもステロイドという言葉がなんだか漠然とした表現ですよね。まあ一般的にはほぼ副腎皮質ホルモンのことを指します。

化学的性質としては、前述のとおりステロイドホルモンは脂溶性ということがなにより重要です。


それで、ステロイド自体には多くの作用があるのですが、薬として利用される際は主に以下の2つの作用を期待します。

抗炎症作用 と 免疫抑制作用

です。

なので、炎症を抑えるためにステロイドは使われたりするのですが、同時にそれによって免疫力は低下します。

そうすると、例えば感染症による皮膚炎にその炎症を抑えようとステロイドを使ってしまうと、その局所での免疫が低下して感染がよりひどくなる、すなわち皮膚炎がより悪化したりしてしまうんですよね。


次に、じゃあなんでこれらの作用を有するのか?ということが疑問に浮かぶでしょう。

これについては、実は僕ポリクリで皮膚科を回った際、外用ステロイドのレクチャーをしてくださった先生に直接その疑問をぶつけたことがあります。

が、その先生曰く、実はまだ詳細はわかっていない、とのことでした。

とにかく、ステロイドホルモンというのは様々な遺伝子の発現を制御することでアウトカムとしては抗炎症の効果を発揮する方向に傾くわけですが、その機序をすべて把握するのはやはり難しいようです。


では、ざっくりとした話で、どうやって細胞の遺伝子発現に働きかけるのでしょうか

毎度ながらネット上で非常にきれいでわかりやすい図を発見したので、まずそれを貼り付けますね。

f:id:tamakoro1k:20170524004708j:plain
(https://blogs.yahoo.co.jp/yuyamichidori/10855535.html)

はい、まあこの図の通りです。
つまり、細胞質内にある受容体にステロイドホルモンが結合すると、その複合体は核内に移行して、その受容体そのものが転写因子となって特定の遺伝子の発現を制御します。

ここの重要なところは、「受容体そのものが転写因子となる」という点です。

受容体そのものが転写因子となる、です。大事なことなのでこれで三度言いました。


この図の流れ分かっていれば、細胞内受容体に関してはまあOKではないでしょうか。


はい、というわけで、では次回は細胞膜受容体についてお話しします。