再受験・学士編入で医学部を目指そう

20代後半、男。医師・獣医師。 医学部受験情報の発信や編入向けの生命科学の解説をしていきます。2018年3月31日より医学部編入受験生のためのウェブサイトMediTransを立ち上げましたhttps://www.meditrans.solutions

【医学部編入】生命科学講義・細胞の死と癌化③ ~癌遺伝子と癌抑制遺伝子~

どうもこんにちは、タマころです。

今日はがんの話をします。

内容に入る前に、まず「腫瘍」や「がん」の定義をしっかり押さえましょう。

グーグル検索すると京大の病理の講義資料と思わしPDFが引っかかったので、そちらを引用させていただきます。
https://ocw.kyoto-u.ac.jp/ja/07-faculty-of-medicine-jp/general-pathology/pdf/general_pathology09.pdf


腫瘍・・・細胞の異常によって起こる組織の異常増殖であり、組織が自律性に無目的性(無秩序性)に過剰増殖したもの

がん・・・悪性腫瘍の総称予後不良な腫瘍で、組織を浸潤、破壊し、転移する。


さらに、がん(悪性腫瘍)は癌腫肉腫に分けられます。漢字の「」は「癌腫」と同義になります


癌腫・・・上皮性悪性腫瘍

肉腫・・・非上皮性悪性腫瘍


このあたりは言葉の定義なので、軽く知っておきましょう。


さて、今日の本題は癌遺伝子癌抑制遺伝子です。
なお、この時の「癌」は、本来ひらがなで表す方が一般的のようですが、変換が面倒くさいのでこのまま漢字表記でいかせていただきます。



癌遺伝子 oncogene

名前の通り、発がん作用のある遺伝子のことです。

ちょっと気をつけなければいけないのが、その名称です。

癌遺伝子は、もう機能のおかしくなったものを指します。
つまり、癌遺伝子といっても元々は正常の機能をもった細胞に必須の遺伝子だったわけで、その野生型を「癌原遺伝子 proto-oncogene」と呼びます。

それで、癌原遺伝子に機能獲得型変異 gain of function変異が起きると、それが「癌遺伝子」になるわけですね。

さて、癌遺伝子にどんなものがあるかというと、代表的なものとして

sis(細胞増殖因子)
src(チロシンキナーゼ)
myc(転写因子)
ras(Gタンパク質

なんてものがあります。
それぞれ、様々なメカニズムで癌化に導くわけですが、その細かいカスケードは特別知っておく必要はないかと思います。

出題されたとしても、誘導があってその場で考えられるようになっているはずです。


そして大事なことは、「どうやって癌原遺伝子が癌遺伝子になるか」です。

そのメカニズムは主に以下の3つがあります。


点突然変異 染色体転座 遺伝子増幅


おそらく点突然変異は身近で分かりやすいでしょう。染色体転座もまあ分かるかなと思います。

問題は「増幅」ですね。聞きなれない変異の仕方かもしれません。

増幅は、以下の図のように遺伝子のコピー数が増加してしてしまい、結果として過剰にタンパク質が発現してしまう現象です。


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http://www015.upp.so-net.ne.jp/j-hata/byouri/hatugan.html


というわけで以上、癌遺伝子についてでした。



癌抑制遺伝子 tumor suppressor gene

こちらは反対に、普段は癌化を抑制する方向に機能していて、その機能が欠失するようなloss of function変異が生じると、発癌促進的に作用します。

代表的な遺伝子としては

p53
Rb

があります。どちらもすごい有名ですね。


まずp53ですが、その機能は非常に多岐に渡り、かなり強力な癌抑制効果を持っています
が、残念ながらその全貌を僕も全然把握できていません。

おそらく受験生としても、それを把握しておく必要はないと僕は思います。こちらも問題文中のヒントで十分正答できるように出題されるべきでしょう。


Rbは、網膜芽細胞腫 Retinoblastoma の発生に深く関わる遺伝子として発見されました。歴史的に何より重要なのは、最初に発見された癌抑制遺伝子というところです。

そんなRbは基本的には細胞周期の抑制に働いていて、それがおかしくなると細胞がどんどん分裂しちゃう方向に傾くわけですね。


あと、癌抑制遺伝子で大切なのは、"two hit theory"なるものでございます。

これは、クヌードソン Knudson という方が提唱した理論で、Rb遺伝子でそれが証明されたのです。

この説は、ようは「癌抑制遺伝子は劣性なんですよ」ということで、対立遺伝子の両方にloss of function変異が生じる必要があるわけです。

遺伝的にRbの片方に変異を持っている児は、そうでない人に比べて網膜芽細胞腫の発症年齢が早い、という結果から導かれました。


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家族性腫瘍とは|家族性腫瘍(がん)相談室|外来案内|独立行政法人国立病院機構 四国がんセンター


反対に、癌遺伝子はふつう「優性」の形質を持っています。なので、対立遺伝子の片方に変異が入るだけで癌化のスイッチが入ってしまいます。


そこの違いは押さえておきましょう。



とはいえ、p53など癌抑制遺伝子にも優性の性格を示すものがたくさんあり、そんなに単純な話でもないのです。

それについて、次回ちょっとだけお話します。この話は短めになると思うので、連チャンですぐにアップするようにしますね。