【医学部編入】生命科学講義・細胞の死と癌化② ~アポトーシスのメカニズム~
どうもこんにちは、タマころです。
前回講義ブログをアップしたのが4月1日... 二週間以上も空いてしまった!
このままでは編入シーズンまでに一周が終わらないよ...
いや、気を取り直して今日からまたやっていきます!(三日坊主説有力)
さて、前回はネクローシスとアポトーシスについて総論的にお話しましたが、今回はアポトーシスの2つの機序についてちょっと細かくやっていきます。
前回少し触れた通り、アポトーシスには
内因性経路 と 外因性経路
があります。
それぞれ一言でいうと、
内因性経路はミトコンドリアが関わる
といった感じでしょうかね。
このイメージを持ちながら以下読み進めていっていただければと思います。
わかりにくいとあれなので、先に図を出しときますね。
(http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=09-02-02-21)
内因性経路
内因性経路は前述の通りミトコンドリアからスタートします。
種々の外的ストレスや細胞内部環境の異常によりアポトーシス開始シグナルが入ると、まずミトコンドリアからシトクロムcが放出されます。
放出されたシトクロムcはアダプタータンパク質と呼ばれるApaf-1という分子に結合して、その複合体がさらにカスパーゼ9に結合します。
それによってカスパーゼ9は活性化状態となり、さらにカスパーゼ3やカスパーゼ7を活性化します。
そして、最終的に彼ら(カスパーゼ3・7)がアポトーシスを実行します。
流れとしては以上なのですが、実はこの経路にはもう一つ重要な働きをもつ分子があります。
それは、ミトコンドリア膜に存在するBcl-2と呼ばれるタンパク質です。
Bcl-2は、ミトコンドリア外膜の透過性を低下させることでシトクロムcの放出を抑制し、それによってアポトーシスの誘導を抑制します。
だから、このタンパク質が機能不全になるとアポトーシスが起きやすくなるだろうし、
反対に異常に働くようになるとアポトーシスが起きづらくなります。
実際、ある種のリンパ腫でみられる染色体異常にIgH/Bcl-2のキメラ遺伝子の形成というのがあるのですが、これは免疫グロブリンの遺伝子とBcl-2の遺伝子がくっついちゃうことでBcl-2が過剰発現してしまいます(もともとリンパ球においてIgHはたくさん発現している)。
そうなることで、アポトーシスが抑えられ細胞が癌化しちゃうというわけですね。
これは余談ですが、僕がポリクリで血液内科をまわっているとき、上記のキメラ遺伝子の話が出て先生に
「Bcl-2ってわかりますか?」
と質問されたのですが、班員7人中僕以外の6人全員知りませんでした。
まあつまり言いたいことは、そんなに当たり前な知識じゃないよってことです。
正直編入の勉強してるとその辺マヒしてきます。受験生みんな詳しすぎ!
というわけで、このミトコンドリアから始まる内因性経路の流れ、押さえておきましょう。
外因性経路
こちらは、読んで字のごとく外からの刺激でアポトーシスが誘導されるわけですね。
それに関係するのが、Fasという膜貫通型タンパク質です。
これは細胞膜表面にあるレセプターです。
それで、Fasに外からリガンドがくっつくとスイッチが入ります。
そのリガンドの名前は、Fasリガンド(FasL)といいます。
このパターンって珍しくないですか?ふつうレセプターの方に「ホニャララレセプター(IL2レセプターとか)」っていう名前がつくのに、これは反対ですね。
さて、話は戻って、FasLが結合するとFasは3量体を形成して、その細胞質内に存在するdeath domain(名前ヤバい)というところにFADDというタンパク質が結合します。
FADDは、Fas-associated death domain proteinの略です。
それで、FADDはさらにカスパーゼ8と結合できるのですが、このFas、FADD、カスパーゼ8からなる巨大な複合体をDISCとかっこよく呼びます。
DISCは、death-inducing signal complexというらしいデス。
さっきから常に"death"が入ってますね。物騒デスね。
そして最終的に、DISC上で活性化したカスパーゼ8はカスパーゼ3・7を活性化して、以下内因性と同様にアポトーシスが実行されます。
...というわけで、以上2つの経路をしっかり理解・カスパーゼの数字の暗記をしておきましょう(数字は直前でもいい)。
このあたりは、どうしても穴埋め問題等で出題しやすいので狙われやすいです。
なので、流れと同時にそれぞれのタンパク質の名前も押さえながら勉強していくと良いかと思います。
それでは、また次回!