【医学部編入】生命科学講義・DNAの修復機構① ~一本鎖の損傷~
どうも、久々の生命科学講義になります。
最近、本業の方がしんどいことになっておりまして、こちらの更新が疎かになってしまっています。
講義シリーズを年内に終わらせたいという野望はやはり果たせないのか・・・
さて今回は、だいぶ前に途中だった分子生物学の内容としてDNAの修復機構について話を進めていきます。
まずは全体像を把握しましょう、ということで、以下『イラストレイテッド生化学 原書6版』から引用した図をお見せします。
略語ばっかりで恐縮ですが、ここで僕が言いたいのは図の「DNA損傷」の矢印下の左側がようは一本鎖の損傷で、右側が二本鎖の損傷であるということです。
そしてそれぞれ、左側が3種類(一番下の段)、右側が2種類(NHEJまたはHR)あるよというのを予め示しておきます(修復の種類が左右で段が揃ってなくて非常にわかりづらい・・・)。
では、本日は左側の一本鎖の損傷について解説していきます!
ヌクレオチド除去修復(NER)
上図でいう「紫外線によるチミジン二量体」のことです。
そもそもチミジン二量体ってなんだ?って話ですが、これは細胞に紫外線が照射された際に主にチミンが共有結合して二量体化することを指します。
少ないながらシトシン同士も二量体を形成することもあるので「ピリミジン二量体」っていう方が一般的ですね。
※ピリミジンとはシトシン、チミン、ウラシルのこと。それ以外のアデニンとグアニンは「プリン塩基」とよばれる。こちらを"Pure Ag"(純銀)と覚えておけば、ピリミジンも自ずと分かる。
修復方法としては、まずその二量体の両端を切断します。その時にはたらく酵素を紫外線特異的エンドヌクレアーゼといいます。
次にその除かれた部分をDNAポリメラーゼにより元通りに修復し、最後にDNAリガーゼでくっつけます。
ちなみに、もう一つの修復法として、光回復というものがあります。
ただ、この経路は哺乳類には存在しないもので、主に細菌で話題になるようです。
ミスマッチ修復(MMR)
これは、DNAポリメラーゼがDNAを複製した際、校正機構をもってしても見逃されてしまったエラーを修復する機構です。
なので実際には「損傷」とはいえないものなのですが、まあ広い意味で捉えていただければと思います。
まずはミスマッチが存在するDNA鎖(ミスマッチのどちらが娘鎖なのか)を同定し、その塩基の両端をエンドヌクレアーゼによって切断します。
その後は、上記のNERと同様にDNAポリメラーゼで修復・DNAリガーゼで再結合という流れになります。
図のように、原核生物では親鎖の所々がメチル化されていることでどちらが親鎖かを認識するのですが、真核生物ではそのメカニズムはまだ正確にわかっていないようです。
塩基除去修復(BER)
ある塩基が何らかの原因で異常な塩基になってしまった際にはたらく修復機構になります。
"異常な塩基"というのは、シトシンが脱アミノ化することでウラシルとなったり、グアニンやアデニンが酸化してしまったりすることを指します。
それで、その異常な塩基をまずはDNAグリコシラーゼという酵素が認識して、ヌクレオチドの塩基部分のみを除去します。
その結果、一塩基部分のみぽっかりと穴が開くのですが、なぜかその部位にはAPサイト(apirimidinic / apurinic site)というかっこいい名前が付いています。
さて、その部位を今度はAPエンドヌクレアーゼというのが認識し、5’側のみを切断します。その後結局もう片方も切断されて、最終的にはやはりDNAポリメラーゼで修復・DNAリガーゼで再結合されます。
というわけで、一本鎖の修復に関しては以上になります。
次回は二本鎖の修復、そしてその次はCRISPR/Cas9の説明をしていこうと考えています。
それでは。