【医学部編入】生命科学講義・細胞の周期と増殖② ~細胞周期の制御メカニズム~
どうもこんにちは、タマころです。
前回の続きになります。実際に編入試験で問われる、少々細かい話になっていきますが頑張りましょう。
ポイントは2点です。
・細胞周期を促進するメカニズム
・細胞周期を抑制するメカニズム
です。まあ、当たり前ですね。
まず促進する方ですが、こちらは兎にも角にも
サイクリン と CDK
という2つの分子がキモになります。
CDKは、cyclin dependent kinaseの略です。
これらは複合体を形成してはじめて機能します。
これからサイクリン○とCDK○と、○には数字が入りますが、そういう名前のものがいくつか登場します。
覚える事が多くて嫌になっちゃいそうですが、頑張りましょう。
M期開始の制御
M期に関与するサイクリンとCDKは
サイクリンB-CDK1(Cdc2)複合体
です。
紛らわしいですが、上図のCdc2はCDK1の別名になります。
この複合体はG1期やS期にも存在はしているのですが、CDK1の残基がいくつかリン酸化されているので不活性化されています。
それがM期になると、Cdc25フォスファターゼという酵素がCDK1を脱リン酸化して、サイクリンB-CDK1(Cdc2)複合体の酵素活性が著明に上昇します。
このような制御によって、この複合体はM期に特異的に機能するようになっています。
S期開始の制御
これは図にあるように、2つの複合体がオーバーラップして関与します。
早めに作用するのは、
サイクリンD-CDK4/6複合体
というものです。
G1期に増えていったサイクリンD-CDK4/6複合体は、癌抑制遺伝子として有名なRbタンパク質をリン酸化します。
Rbは転写調節因子であるE2FとDPというタンパク質と複合体を形成しているのですが、リン酸化するとこのRbが遊離します。
そうすると、E2Fが活性化されてDNA複製に必要な遺伝子群の発現を誘導します。
その遺伝子群には次の登場人物である
サイクリンE-CDK2複合体
が含まれます。サイクリンE-CDK2複合体もRbタンパク質をリン酸化させることができ、それにより自身の発現はさらに亢進し、結果的にDNA複製に必要な遺伝子群の発現が加速します。
このようなメカニズムによって、DNA合成期であるS期が開始します。
細胞周期を抑制する因子
これにはCKI(cyclin kinase inhibitor)とよばれる分子群が関与します。
サイクリンD-CDK4/6複合体は主に
p15,p16,p18,p19
サイクリンE-CDK2複合体は主に
p21,p27,p57
と呼ばれるCKIによって活性が抑制されます。
正直この数字は覚えなくていいと思うのですが、それぞれ阻害の仕方がちょっと違うのでそこは知っておいてもいいかもしれません。
上の4つは、サイクリンと拮抗してCDKと結合することで作用を抑制します。
対して下の3つは、サイクリン-CDK複合体に結合して作用を抑制します(複合体の形成は邪魔しない)。
ちなみに癌抑制遺伝子界で最も有名であるp53は、その多彩な機能の一つにp21の発現を促進する働きがあります。
p21はサイクリンD-CDK4/6複合体とサイクリンE-CDK2複合体の両方に結合することができ、細胞周期を強く抑制します。
したがって、p53は細胞終期を停止する方向にシフトさせられる重要なタンパク質といえます。
チェックポイント機構
細胞には、いま自分がこのまま次のステップに進んでいいのかどうか自問自答する機構が備わっています。それをチェックポイントと呼びます。
とりあえずどこにチェックポイントがあるかが重要です。上図に線が入っているので分かる通り、大きく3箇所存在します。
①M期チェックポイント・・・正常な紡錘体が形成されたか、秩序あるM期進行か、がチェックされます。
②G1/Sチェックポイント・・・増殖条件が良いかどうか、DNAが損傷していないか、がチェックされます。
③G2/Mチェックポイント・・・正常なDNA複製が完了したか、DNAが損傷していないか、がチェックされます。
それぞれチェックしたい項目を実際にチェックするわけなのですが、その分子メカニズムはどれも複雑で(僕が全然理解していない)仮に出題されるなら十分な誘導があると予想されるので、もし出たらその場で頑張って考えて乗り切りましょう。
知識としては上記のやんわりした理解でいいかと思います。
...というわけで、細胞周期の制御メカニズムは以上になります!
いろんなタンパク質が出てきてちょっとしんどいですね^^;
まあわかってくると案外クリアになるので、少し時間をかけて勉強されることをお勧めします。その方が忘れにくいかと思います。
それでは、また。