再受験・学士編入で医学部を目指そう

20代後半、男。医師・獣医師。 医学部受験情報の発信や編入向けの生命科学の解説をしていきます。2018年3月31日より医学部編入受験生のためのウェブサイトMediTransを立ち上げましたhttps://www.meditrans.solutions

【医学部編入】生命科学講義・シグナル伝達③ ~Gs・Gi・Gq セカンドメッセンジャー~

どうもこんにちは、タマころです。

前回はGタンパク質連結型受容体には種類がいくつかあるよ(Gs・Gi・Gq) というところで終わりましたので、本記事ではそれぞれの違いについて説明していきます。


Gs

まずGsは、stimulate(刺激する)という意味でしたね。

これは、Gタンパク質のαサブユニットが活性化してから...

アデニル酸シクラーゼ(AC)活性化
→ 細胞内のサイクリックAMP(cAMP)量増加
プロテインキナーゼA(PKA)活性化
PKAがいろいろな生理機能の変化を起こす

というカスケードを経て、機能を果たします。


Gi

反対に、Giは、inhibit(抑制する)の意味でしたね。

こちらは、同様にαサブユニットが活性化するわけですがその後は真逆に動きまして…

アデニル酸シクラーゼ(AC)の活性化を抑制
→ 細胞内のcAMP量減少
PKAの活性を抑制

という流れで抑制的な効果を発揮します。


2つの毒素

それで、GsとGiという若干マニアックにも思われる知識がなぜ試験で問われやすいかということなんですが、それにはある毒素の存在があります。

それは...

コレラ毒素 と 百日咳毒素

です。

この2つ、すごい似ている毒素なんです。どちらもGタンパク質に作用するのですが、その違いは微妙なところなんですよ。

結論を先にいうと、どちらも細胞内cAMP濃度を増加させます。まずこの結論ありきで考えたほうが、覚え間違わないように済むかと思います。


まずコレラ毒素ですが、こちらはGsに作用します。

毒素が活性化した(GTPの結合した)Gsタンパク質をADPリボシル化して、不活性化型(GDP結合型)に変換できなくします。
そうすることでGsは活性化しっぱなしになり、アデニル酸シクラーゼの活性が促進され続けて、結局cAMP濃度が異常に上昇してしまいます。


次に百日咳毒素の場合、今度はGiに作用します。

この毒素もやること自体は、ADPリボシル化という上記と同じものなのですが、こちらでは不活性型の(GDPの結合した)Giタンパク質を活性化型に変換できなくしてしまいます。
その結果アデニル酸シクラーゼの活性は抑制されず、やはりcAMPは異常に上昇します。

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(https://cdminny.blogspot.jp/2013/11/wiltims-70-new-look-same-great-taste.html)

なかなか機序が難しいですが、学問的には面白い対比なのでしょうね、割とトピックに取り上げられやすいみたいです。
はじめはぼんやりとした理解でも構わないので、毒素の名前と最終的に起こる変化くらいはおさえておきましょう。


Gq

さて、残るGタンパク質Gq。これは由来不明で、上記2つとは異なる伝達をしているという話でしたね。

具体的には、

Gqの活性化
ホスホリパーゼC(PLC)活性化
ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)加水分解
→ 細胞内のイノシトール 1, 4, 5 -三リン酸(IP3)
  ジアシルグリセロール(DG)量増加
→ IP3が小胞体に作用してCaイオン放出 
  DGがプロテインキナーゼC(PKC)活性化
CaイオンPKCがさまざまな生理活性を促す

といった具合に反応が進みます。

Gqについては、これより深い話はたぶんそう問われないと思われます。
なので、この矢印で示したカスケードの流れを、物質名を含めておさえていけば十分でしょう。


セカンドメッセンジャー

この単語をなくしてはシグナル伝達を語れませんよね。

名前は本当によく聞きます。しかし、定義としてはどういうものを指していて、その生理的な意義はなんでしょうか?

まず定義は、ウィキペディアを参照すると

細胞内において、情報伝達物質が受容体に結合すると、新たに別の情報伝達物質が作られ、これが細胞の代謝や変化に影響を及ぼす。この二次的に産生される情報伝達物質のことをセカンドメッセンジャー(英文表記:Second messenger system)という。

ということのようです。
この定義そのものを聞いてくることもあるので、受験生の方はこのニュアンスは頭に入れておくといいでしょう。

それで、どんなものがセカンドメッセンジャーなのかというと、

Gs・GiでいうとcAMP

GqでいうとIP3DG

になります。

そして、その存在意義は大きくは2つ考えられます。

一つは、ファーストメッセンジャー(リガンド)は無数にあるわけで、もしそれぞれ別個で固有のシグナル伝達を用意していたら、それに対応するタンパク質もまた無数に必要になって、そんなことは有限の遺伝子では不可能だから。

もう一つは、少ない量のファーストメッセンジャー(リガンド)からの刺激が、受容体の活性化という形に変わり、それによって多くセカンドメッセンジャーが合成され、そこから多数酵素が活性化されるという、情報の増幅としての役割。

このあたりになるかと思われます。

一見当たり前のような話ですがいざ深く考えてみると難しい、といった雰囲気がありますよね。ワード自体は初学者でも知っているようなものではあるのですが。




というわけで、Gタンパク質によるシグナル伝達の細かい話は以上になります。

次回はチロシンキナーゼ受容体について勉強しましょう(短めになるかと思います)。