【医学部編入】生命科学講義・神経生理学⑤ ~興奮の伝達~
どうも、タマころです。
最近ブログの更新がんばれてます!
さて、今日は神経生理学のラストで興奮の伝達というテーマでやっていきますね。
まずはじめに、言葉の確認をしたいです。
伝達というワードなのですが、結構伝導と混同されている方が多いようです。
気を付けてください。
伝達は「ある神経細胞から次の神経細胞に興奮が伝わること」を指し、
対して伝導は「神経細胞内で活動電位が移動すること」を指します。
神経"伝達"物質 や 跳躍"伝導" といった風に、地味に使い分けられていますね。
では、本題に入っていきます。今日のポイントは3つ
神経伝達物質
基本は
ですね。
ただ、 交感神経=ノルアドレナリン という一対一対応は危険です。
というのも、交感神経でも節前と節後の間の伝達は
アセチルコリンですからね。
初めて知ったという方は、よく覚えておいてください!
ちなみに、交感神経節後繊維でもアセチルコリンを放ってしまう例外もあったりします(汗腺)。
めんどくさいですね。
と、さらにもう一つ注意点があります。
それは、上記二つ以外に神経伝達物質はいっぱいあるという事実です。
さっきまでの話は末梢神経に限ったことで、中枢神経系ではグリシンやアスパラギン酸、グルタミン酸といったアミノ酸類やセロトニンやヒスタミンなど数多くの神経伝達物質が存在します。
編入試験でどこまで問われる可能性があるか判断が難しいところですが、アセチルコリンとノルアドレナリンだけじゃないってことだけでも頭に入れてもらえればと思います!
シナプス後電位
今日の話のメインになります。
シナプス後電位...きっとこの単語を初めて聞いたという方もいるでしょう。
読んで字のごとく、「シナプスの後ろ側(情報を受け取る側)の神経細胞で発生する電位」のことを指します。
当然、シナプスの前側の軸索終末から神経伝達物質が放出されて、それによって後ろ側の神経細胞がシグナルを受けるのですが、もしただ興奮性の刺激を受けるだけだったらわざわざこんな用語持ち出す必要ないですよね?
逆を言えば、これは結構意味のあるワードなのです。
それはなにかというと、はやい話、抑制性のシグナルもあるということですね。
そこで、興奮性と抑制性のシグナルをそれぞれ
興奮性シナプス後電位
excitatory post-synaptic potential(EPSP)
抑制性シナプス後電位
inhibitory post-synaptic potential(IPSP)
と呼びます。一般に英語の略語を多用するので、この英字4文字は是非覚えましょう。
それでじゃあ、それぞれどうやって興奮させたり抑制させたりしているかなんですが、これも結構単純で、シグナルを受けることで開口するチャネルの種類が違います。
EPSPの場合はナトリウムチャネルです。なので当然脱分極します。これは普通ですね。
それでIPSPはというと、この場合はClチャネルが開きます。
Clイオンは細胞外のほうが濃度の高い陰イオンなので、ナトリウムと同じように細胞内に流入するのですが、こちらは反対に過分極を誘導します。
つまり...
Naチャネルが開いて脱分極する(膜電位が上がる)のがEPSP
Clチャネルが開いて過分極する(膜電位が下がる)のがIPSP
ということになります。
あとIPSPのポイントは、情報伝達物質の種類ですね。
代表例はγアミノ酪酸、通称GABAです。
チョコの製品の名前になってるあれです。他にもいくつかあるんですがこれだけでも覚えてください。
EPSPとIPSPの意義
結論を言えば、脳の活動性を制御していることになります。
中枢神経系では、無数の神経細胞同士がネットワークを形成していて、非常に複雑化した構造になっています。
それで、ある樹状突起(シナプスの後ろ側)に注目したとして、そこには複数の神経細胞がシナプスを形成してシグナルを伝達させています。
そのときに、EPSPとIPSPが同時に起こっているわけで、それらの総和によって樹状突起で発生する膜電位というのが決まっていきます。
EPSP優位であれば、当然閾値に達しやすくなるでしょうし、反対にIPSPが優位だとなかなか活動電位は発生しません。
これは人間の場合、思考や言動に現れてくるわけですね。
EPSP優位だと感情が激しく、IPSP優位だと抑うつぎみになったりします。
実際に例えば、向精神薬の一種であるベンゾジアゼピン系抗不安薬は、GABAA受容体に作用してClチャネルの開口頻度を増加させてIPSPを強めることで抗不安作用を示します。
ようは"落ち着く"わけですね。
覚えにくいということであれば、先ほども例示したチョコのGABAを思い出してください。
経口摂取で本当に効果があるかは未知数ですが、まあ編入受験生にとってはいい題材です。
というわけで、いかがだったでしょうか。
どうもこの単元は、高校生物で習う末梢神経での話が刷り込まれているせいかなかなか理解しづらい分野なのですが、この記事で少しでも理解のとっかかりになればいいなと思っています。
神経生理学はこれで以上になります。
編入試験もこれから終盤に差し掛かってきて、9月は連戦もありますが、体調にお気をつけて受験生の皆様には頑張っていただきたいと思います。
医学部学士編入関連の本の紹介 ちょっとレビューも
どうも、タマころです。
僕のブログを覗きに来るくらいネット上で編入の情報を漁っている読者の皆様であれば、当然出版されている編入関係の本にも手を出しているかと想像します。
買うまでいかないにせよ、本屋で立ち読みしたことくらいはあるでしょう。
というわけで!本記事ではそれらの本をいくつかご紹介します!!
ちなみに僕が受験生のときは、結構買いましたね。
カルス通ってなかったのでかなり頼った記憶があります。
- 医学部学士編入ラクラク突破法(2012年出版)
- 医学部学士編入を目指すあなたへ(2009年出版)
- ホントは誰にも教えたくなかった! 医学部学士編入成功の秘訣(2013年出版)
- (番外)脱サラ精神科医が明かす医師・医学部生の実態と再受験成功の鍵(2013年出版)
医学部学士編入ラクラク突破法(2012年出版)
昔は毎年改訂されていたが、この第5版(2012年)で止まっている。なぜ??
内容としては、ネットに載っているような情報をまとめてくれている感じ。それこそネットでの情報収集の仕方も書いてあったりする。
合格体験記や各大学の傾向とかも載っていたりして、出版当時であればかなり貴重な一冊。
ほんと、なんで改訂をやめてしまったんだ・・・?
医学部学士編入を目指すあなたへ(2009年出版)
編入合格経験者が連名で書いている本。生の意見が載っている点はかなりいい。
でも・・・でも僕は当時これを読んで、決してポジティブな気持ちにはならなかったです。
なぜかというと、学士編入のハードルが高く思えたからです。紆余曲折な体験談も中にはあった気もするけど、みんな優秀だなあ!という気分になった覚えがあります。
まあ、そりゃそうですよね。有志を募って「本を出そうぜ!」というのに手を挙げた人だけで書かれているんですから、それなりにバイアスがあるはずです。
確か最後の方に生命科学の知識チェックシートがあったと思うのですが、そこで打ち砕かれました。こんなに知ってないといけないの?って。
なんていうか、たしかに生の情報という点では最高なんですが、これ読んで諦めちゃう人もいそうだな、と思った次第です。
しかし出版からすでに8年が経過しています。新しいのは出さないんでしょうかね?
ホントは誰にも教えたくなかった! 医学部学士編入成功の秘訣(2013年出版)
阪大編入生数名によって書かれた一冊。要はエリート中のエリートが書いた、エリートのための本といえる。
代表の方はもともと出版社とのツテがあったのだろうか・・・正直うらやましい限りだが、しかし彼らがどんな苦労話を本文中に書いたとしても、それは読者たちの共感を呼ばないでしょう。
一個人の経験であれ編入ではすべてが貴重な情報源になりうるため、このような試みをすべて否定するつもりはないけど、ひたすら各人の体験記をくっつけて出版するというのはさすがに"やっつけ"すぎではないだろうか。
あと「ホントは誰にも教えたくなかった!」という謳い文句も気に入らない・・・
知識人なのだからせめてタイトルくらい正しい日本語(ホント→本当)を使ってほしかった。
(番外)脱サラ精神科医が明かす医師・医学部生の実態と再受験成功の鍵(2013年出版)
現在精神科医をされている方が、おひとりで書かれた再受験生向けの本。
著者の方は再受験を選択されたのですが(どのような理由だったかは忘れました)、編入との比較も書かれていたりして、全体的になかなか本質をついた内容だったと記憶しています。
あと、頭は良いのは間違いないですが、それだけじゃなくて…バランス感覚の良い方だな、当時の苦悩もさらけ出していて非常に素直な方なんだなという風に読んでて感じました。
著者の方の体験談がメインですが、それなりに客観性のある情報も含まれていて、再受験と迷われている方は手に取っていいのではないかと思います。
以上4冊について、紹介・レビューをさせていただきました!
なにより僕が気になったのは、いずれも2013年以前の本で最近の情報が載っていないという点です。
なぜ近年、新刊や改訂版が出版されないのかわかりませんが、予備校に頼らず個人で勉強されている方々は切望されているのではないかと想像します。
まあそのような方は、いまならまだ個別で相談受け付けられますので、遠慮なく当ブログのプロフィール欄にあるメールアドレスまでご連絡いただければと思います。
【医学部編入】平成29年度旭川医科大学 生命科学 解答
どうも、タマころです。
旭川医科大学の試験が今週末に迫ってますね。
そこで、昨年度の生命科学の解答を作ってみました。
以下のサイトから購入することができるので、もしよかったらどうぞ〜(税込999円)
【平成29年度 旭川医科大学医学部 学士編入学試験 生命科学 解答】
こうやって解答作ってみると、この大学は論述問題、考察問題の割合が多いですね。
記述力で差がつきそうです。
9月2日受けられる方は頑張ってください!
【医学部編入】生命科学講義・神経生理学④ ~活動電位~
どうも、タマころです。
今日は活動電位について勉強しましょう。
活動電位も静止膜電位の形成と同様けっこう奥が深いのですが、あまり深追いしすぎないように解説していきます!(本当は自分が理解しきれてないだけ^^;)
Point① ナトリウムイオンが大事
静止膜電位の形成にはカリウムイオンが大事でしたね。
活動電位では、今度はナトリウムイオンが主役になります。
細胞が刺激を受けると膜電位が静止膜電位の-70mVから上昇していくわけですが、それが-40mV付近まで達すると活動電位が発生します。
それは、電位依存性ナトリウムチャネルというのが開口し始めるからです。そして、そのあたりの膜電位の値を閾値(いきち)といいますね。
電位依存性ナトリウムチャネルが開くと、ナトリウムイオンは細胞外のほうが濃度が高いので、一気に細胞内に流入します。
そうして、急減に膜電位は上昇していきます。
これが活動電位の発生になります。
Point② カリウムイオンも働いてるよ
活動電位の波形を見る前に、一応このことを強調しておきたいです。
実は活動電位が発生すると、ほぼ同時にまたはちょっと遅れて複数のカリウムチャネルも開口して、カリウムイオンは細胞外に出ていきます。
一応これ自体は膜電位を負の方向にもっていく動きなのですが、上記のナトリウムチャネルによるナトリウムイオンの流入による正方向の移動のほうが激しいので、結果的に打ち消されて見えなくなってしまいます。
Point③ 活動電位の一連の流れ
(http://sakurasakukango.web.fc2.com/saibou_kouhun.html)
まあよく見るやつですね。穴埋めで出題される可能性もあるので名前もちゃんと確認しながら、順番に流れをみていましょう。
「閾値」に達する
→電位依存性ナトリウムチャネルが開く
→急激に「脱分極」する
→膜電位は0mVを超え「正」になる(この状態を「オーバーシュート」と呼ぶ)
→+30mVあたりで電位依存性ナトリウムチャネルが閉じる
→それにわずか遅れて今度は電位依存性カリウムチャネルが開く
→その後はピークを迎え「再分極」していく
→電位依存性カリウムチャネルが閉じる
→いったん静止膜電位を超えて「過分極」する
→元の静止膜電位に戻る
基本的な事項ですので、しっかり押さえましょう。
ちなみに、刺激が閾値に達しなければ当然活動電位は発生しないわけで、この性質を「全か無かの法則」呼びますね。念のため。
Point④ 最後過分極してるけど?
過分極が起きてしまうのは、電位依存性カリウムチャネルの閉じるタイミングがちょっと遅いからです。
そのため、膜が十分再分極した後もカリウムイオンの流出が続き、一時的に膜電位が通常の静止電位よりもさらに低くなってしまうのです。
この過分極状態をアンダーシュートと言ったりもします。
それで、この状態から元の静止膜電位に戻る際に、カリウムイオンは普段の向きとは反対に、つまり細胞外から細胞内の向きに流れていくわけですが、その時だけに効率的にはたらくチャネルがあったりします。
その名も
内向き整流性カリウムチャネル
というやつです。
これは、外向きにいくよりも内向きのほうが効率的にカリウムイオンを通すチャネルで、そう呼ばれています。これが過分極時にははたらいて、膜電位を速やかに静止膜電位の値に近づけます。
Point⑤ 不応期
これは有名ワードですね。
一回活動電位が発生すると、ちょっとの間(数ミリ秒という単位)また刺激を加えても再び活動電位が発生しないというやつです。
大事なことは、その存在意義ですよね。
不応期の存在のおかげで、興奮の伝導は一方方向にのみ伝わっていけるわけですね。
簡単な話ですが記述で問われたりすることもあるので、ビシッと書けるようにしておきましょう。
さて、不応期にはさらに絶対不応期と相対不応期がありますね。
絶対不応期:再分極の途中まで(2ミリ秒程度)で、どんな刺激にも反応しない
相対不応期:絶対不応期後の数ミリ秒間で、閾値が上昇している(強い刺激にのみ反応する)
まあ編入試験ではさらに不応期の起こるメカニズムとかまで問われるかもしれませんね。よかったら、そのあたりはご自身で調べてみてください。
というわけで、今回は基本事項に終止してしまいましたが活動電位については以上となります。
次回はシナプス関係の話になります。
【医学部編入】志望動機添削します【浜医・山口・秋田】
どうも、タマころです。
今回は告知です。
タイトルの通りですが、間もなく願書提出の締め切りが迫っている上記3大学について、志望動機の添削をします!
これらの大学の出願期間はそれぞれ…
9月
1日-8日:浜松 必着
4日-7日:山口 (6日消印有効)
14日-22日:秋田 必着
となっております。
もちろん今までも添削はやっていたのですが、今回は試験的に一依頼2000円で承ろうと考えています。
↓連絡先はコチラ↓
tamakoro1k@yahoo.co.jp
…しかしこれまで無償でやっていたものをなぜ急にお金取るんだと思われてしまいますが、以下の2点が理由として挙げられます。
・この約半年間で15名ほどの志望動機を見てきて、ボランティアの域を超えつつあるから。
・実はこれまで数名の方からはご好意で謝礼を頂いてしまっていて、その不公平感を無くすため。
ということですので、ご理解いただきたく思います!<(_ _)>
とはいえまあ、今まではタダだから見てもらおうとなるわけで、これで依頼が一件くればいい方だと個人的には思ってます。
ただ、お金を頂く分余計に本気になって見させていただきますし、絶対に良いものを仕上げられる自信はあります!
何卒よろしくお願いします。
昨日の記事(静止膜電位)の補足
前回、静止膜電位について記事をあげましたが
この中に出てきたネルンストの式に関して、一点補足します。
この式、どうやら対数内の分数のところ、分母分子どちらが細胞内濃度か細胞外濃度かで迷う方が多いようです。
ですが実はこれ、迷うことではありませんよ。
カリウムイオンが細胞内濃度の方が高くかつ静止膜電位が負になることさえ覚えていれば、問題ありません。
というのも…
静止膜電位は負→対数は負→対数の中身は1未満→分母のほうが大きい→分母が細胞内濃度
となるからです。
このイメージで認識しておけば、わざわざ覚えていなくてもOKですね!
【医学部編入】生命科学講義・神経生理学③ ~静止膜電位~
どうも、タマころです。
今回は神経生理学③ということで、静止膜電位について説明していきます。
先にポイントを4つほど挙げ、それぞれについて順番に話していきます。
Point① カリウムイオンが大事
まずは、なぜカリウムイオンが静止膜電位の形成に寄与するか?
これはカリウムイオンチャネルのなかに、漏洩(リーク)チャネルと呼ばれる、常に開通しているイオンチャネルがあるからですね。
そしてカリウムイオンは細胞内外で濃度差があって、それによって負の膜電位が形成されるわけです。
そのあたり詳しいところは、Point②でご説明します。
書かれているイオン濃度がどれも微妙に変ですが、いずれにせよこの図のようなイメージになります。
Point② ネルンストの式
まずは式を見てみましょう。
対数があって少々難しく感じるかもしれませんが、係数のところはすべて定数ですので、実は決まった値が出ます。
RT/zF = 26.7
となります。なので、この式で注目すべきところは自然対数の中身、つまり対象となるイオンの細胞内外の濃度比が重要になります。
大事なことですのでもう一度言います、イオンの細胞内外の濃度比が重要になります。
それで、カリウムイオン濃度も実際のところほとんど決まった値なわけなので、それを代入すると図にあるように(繰り返しになりますがこの数値はちょっと変です)-80mVくらいになります。
本当の組成に近い濃度だと、細胞外が5.5mM、細胞内が150mMで計算すると、-88mVとなります。
Point③ 実測値はだいたい-70mV
-70mV?上記ネルンストの式から導いた結果とズレがありますね。
これはなぜでしょう…
まあその答えはさほど難しくなくて、単にほかのイオンの影響がちょっとはあるからです。
具体的にはナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl-です。
これらも、カリウムと比べると透過性が小さいものの、普段から少しは細胞膜を通過します。
それを式で示したものを、その名も「ゴールドマン・ホジキン・カッツの式」といいます。
通称GHK式です。
3人の連名で長ったらく覚えづらいのですが、覚えるコツは口に出しまくることです(結構マジ)。
中二っぽくてかっこいい名前なので、誰かと会話しててこの手の話題が出たときにすかさず言うのです。
あ~わかるよ、ゴールドマンホジキンカッツでしょ。うんうん、ゴールドマンホジキンカッツ。
と。これであなたも立派なミサワです。
さて、編入試験でGHK式に数値代入させることはまずないかと思いますが、念のためどんな式かだけご紹介しますと
という感じです。これに実際の数値を代入して計算すると、実測値とほぼ同等になります。
Point④ 静止膜電位形成のメカニズム
これも跳躍伝導と似たように、さまざまな俗説が流布しているように思われます。
僕も完全に正しく理解している自信はないのですが、できる限り正確に説明できるよう心がけます。
まず、よくある間違い・勘違いは
ナトリウムポンプでカリウムイオンを汲み入れてるから濃度勾配ができて静止膜電位が形成される
というもの。
これは違います。ナトリウムポンプ云々ではなく、単に半透膜である細胞膜を隔てた内外でカリウムイオンの濃度差が存在するからです。
ナトリウムポンプはその濃度差を維持する装置にすぎません。
現に、無機的な半透膜を用いてそれを境に生体と同じようにイオン濃度差をつくってやると、半透膜の周囲に膜電位が形成されそれは持続します。
ナトリウムポンプの役割は、あくまでカリウムイオンの濃度差の維持と活動電位発生時に流入するナトリウムイオンを汲み出す働きです。
それで、ここからが本題です。膜電位がゼロの状態から平衡に達するまでの流れを以下示します。
濃度勾配の関係でK+がリークチャネルを通って細胞外に出る
→細胞外が+、細胞内が-の電位が少し発生する
→外にでたK+はその電位の影響で内側への力をうけ細胞膜周囲に留まる
→リークチャネルを通って流入するK+もいる
→濃度勾配でK+はもっと外に出る
→もっと電位が発生して、リークチャネルから流入するK+が増える
→濃度勾配による流出スピードと電気的勾配による流入スピードが平衡に達する
→静止膜電位が形成される
という感じになります。
あとこの流れの中でよく生じる誤解が2つあります。
一つは、細胞周囲にK+が蓄積するのは細胞内にある負のイオンのおかげ(Cl-とか)、というもの。
これは、もちろん多少は関係あるでしょうが、実験的にカリウムイオン単一のみでも同様に膜電位は作られるので、違います。
もう一つは、この形成に至る過程でカリウムイオンがたくさん動いているんだ、というもの。
つまり、細胞内のカリウム濃度は低下するんじゃないか?とかそういう心配ですね。
実はこれは全然違って、カリウムイオンは溶液中に存在するほんの微量な量(0.0…%というレベル)細胞膜を移動するだけで膜電位は作られます。
それはなぜかというと、上記矢印で示した流れが膜のすぐ近傍、局所のみで起こっている出来事だからです。
この二点、気を付けて理解していただきたいと思います。
では、小難しい静止膜電位についてはこのあたりにして、次回は活動電位の話になります。