【医学部編入】生命科学講義・神経生理学③ ~静止膜電位~
どうも、タマころです。
今回は神経生理学③ということで、静止膜電位について説明していきます。
先にポイントを4つほど挙げ、それぞれについて順番に話していきます。
Point① カリウムイオンが大事
まずは、なぜカリウムイオンが静止膜電位の形成に寄与するか?
これはカリウムイオンチャネルのなかに、漏洩(リーク)チャネルと呼ばれる、常に開通しているイオンチャネルがあるからですね。
そしてカリウムイオンは細胞内外で濃度差があって、それによって負の膜電位が形成されるわけです。
そのあたり詳しいところは、Point②でご説明します。
書かれているイオン濃度がどれも微妙に変ですが、いずれにせよこの図のようなイメージになります。
Point② ネルンストの式
まずは式を見てみましょう。
対数があって少々難しく感じるかもしれませんが、係数のところはすべて定数ですので、実は決まった値が出ます。
RT/zF = 26.7
となります。なので、この式で注目すべきところは自然対数の中身、つまり対象となるイオンの細胞内外の濃度比が重要になります。
大事なことですのでもう一度言います、イオンの細胞内外の濃度比が重要になります。
それで、カリウムイオン濃度も実際のところほとんど決まった値なわけなので、それを代入すると図にあるように(繰り返しになりますがこの数値はちょっと変です)-80mVくらいになります。
本当の組成に近い濃度だと、細胞外が5.5mM、細胞内が150mMで計算すると、-88mVとなります。
Point③ 実測値はだいたい-70mV
-70mV?上記ネルンストの式から導いた結果とズレがありますね。
これはなぜでしょう…
まあその答えはさほど難しくなくて、単にほかのイオンの影響がちょっとはあるからです。
具体的にはナトリウムイオンNa+と塩化物イオンCl-です。
これらも、カリウムと比べると透過性が小さいものの、普段から少しは細胞膜を通過します。
それを式で示したものを、その名も「ゴールドマン・ホジキン・カッツの式」といいます。
通称GHK式です。
3人の連名で長ったらく覚えづらいのですが、覚えるコツは口に出しまくることです(結構マジ)。
中二っぽくてかっこいい名前なので、誰かと会話しててこの手の話題が出たときにすかさず言うのです。
あ~わかるよ、ゴールドマンホジキンカッツでしょ。うんうん、ゴールドマンホジキンカッツ。
と。これであなたも立派なミサワです。
さて、編入試験でGHK式に数値代入させることはまずないかと思いますが、念のためどんな式かだけご紹介しますと
という感じです。これに実際の数値を代入して計算すると、実測値とほぼ同等になります。
Point④ 静止膜電位形成のメカニズム
これも跳躍伝導と似たように、さまざまな俗説が流布しているように思われます。
僕も完全に正しく理解している自信はないのですが、できる限り正確に説明できるよう心がけます。
まず、よくある間違い・勘違いは
ナトリウムポンプでカリウムイオンを汲み入れてるから濃度勾配ができて静止膜電位が形成される
というもの。
これは違います。ナトリウムポンプ云々ではなく、単に半透膜である細胞膜を隔てた内外でカリウムイオンの濃度差が存在するからです。
ナトリウムポンプはその濃度差を維持する装置にすぎません。
現に、無機的な半透膜を用いてそれを境に生体と同じようにイオン濃度差をつくってやると、半透膜の周囲に膜電位が形成されそれは持続します。
ナトリウムポンプの役割は、あくまでカリウムイオンの濃度差の維持と活動電位発生時に流入するナトリウムイオンを汲み出す働きです。
それで、ここからが本題です。膜電位がゼロの状態から平衡に達するまでの流れを以下示します。
濃度勾配の関係でK+がリークチャネルを通って細胞外に出る
→細胞外が+、細胞内が-の電位が少し発生する
→外にでたK+はその電位の影響で内側への力をうけ細胞膜周囲に留まる
→リークチャネルを通って流入するK+もいる
→濃度勾配でK+はもっと外に出る
→もっと電位が発生して、リークチャネルから流入するK+が増える
→濃度勾配による流出スピードと電気的勾配による流入スピードが平衡に達する
→静止膜電位が形成される
という感じになります。
あとこの流れの中でよく生じる誤解が2つあります。
一つは、細胞周囲にK+が蓄積するのは細胞内にある負のイオンのおかげ(Cl-とか)、というもの。
これは、もちろん多少は関係あるでしょうが、実験的にカリウムイオン単一のみでも同様に膜電位は作られるので、違います。
もう一つは、この形成に至る過程でカリウムイオンがたくさん動いているんだ、というもの。
つまり、細胞内のカリウム濃度は低下するんじゃないか?とかそういう心配ですね。
実はこれは全然違って、カリウムイオンは溶液中に存在するほんの微量な量(0.0…%というレベル)細胞膜を移動するだけで膜電位は作られます。
それはなぜかというと、上記矢印で示した流れが膜のすぐ近傍、局所のみで起こっている出来事だからです。
この二点、気を付けて理解していただきたいと思います。
では、小難しい静止膜電位についてはこのあたりにして、次回は活動電位の話になります。
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どうも、タマころです。
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【医学部編入】生命科学講義・神経生理学② ~跳躍伝導~
それでは前回の続きで、今日は跳躍伝導についてお話します。議題はズバリ
なぜ跳躍伝導は速いのか?
でしたね。
「飛び飛びに伝わるから」なんて答えは、答えているようで答えになってませんからね。
これこそあれです。高校生物の弊害というやつでしょうか。
個人的には、まだ素直に
わからない
と言ってくれたほうがいいですかね。
生物学というのはそういうのが多いですし、またそう言い逃れることが比較的許される学問だと思います。
それでこの話、僕昔に結構調べたことあって、一応その時に自分なりに完全に納得して理解できました。
あくまで"自分なりに完璧"であって、本当に完璧じゃないかもしれませんが、きっとこれを聞いて納得できるはずです。
それでは、順を追って説明していきます。
まず、神経の興奮は
電流
みたいな概念を捨てましょう。
実際神経細胞に電気なんて流れていないですからね。モデルとしての等価回路として電流で表すことはあっても。
イオンの動きも、横ではなく縦です。
これ、結構重要です。神経の興奮を担うイオンはナトリウムイオンですが、それはあくまで細胞膜の内と外という縦の関係でしか動きません。
では、有髄神経の前に無髄神経の伝導についてみていきましょう。
これは皆さんご存知の通り、あるところで活動電位が発生するとその周囲の膜電位が上昇して、そこも閾値に達してまた活動電位が発生して、それが連続的に続いていくわけですね(下図)。
※「活動電位」「閾値」などに関しては、次の次の記事でまた詳しく触れます。
(動物の反応と行動|跳躍伝導がわかりません|生物|定期テスト対策サイト)
ここでは「活動電流」(局所電流と言ったりもします)という単語が登場してまた少々ややこしいですが、刺激周囲の小さな局所においては細胞内へ流入したナトリウムイオンが拡散することでまわりの膜電位に影響するのです。
まあ上の図もモデルなので、やはり本物の生体で考えれば別に電子の移動が起こっているわけではないですからね。
なにはともあれ、これが有髄の跳躍伝導になると、この"活動電位の発生"が飛び飛びとなるのです。これ自体は間違った表現ではないです。
(動物の反応と行動|跳躍伝導がわかりません|生物|定期テスト対策サイト)
とまあ、ここまでは高校生物でしょう。
しかしいずれの図もベネッセのサイトから拝借しましたが、本当にわかりやすくて感心しますね。このような平易かつきれいな図のもと勉強できる高校生は、生物を初学する上では本当にいい環境におかれていると思います(皮肉)。
ではいったん目線を変えて...
髄鞘の役割ってなんですか?
ああ聞こえてきます、、、それでは皆さんでせーの(ドクターG風)
絶縁体
お見事です(皮肉)。
不正解とまでは言えないと思いますが、その答えはやはりあくまでモデル上の話ですね。
では生体としての本当の役割はというと...
ナトリウムチャネルを発現させないこと
なのです。
もはや、ここさえ正しく理解できていれば、跳躍伝導が速い本当の理由も理解できるはず。
そうなんです。髄鞘に囲まれている部分の細胞膜にはナトリウムチャネルがないんですよ。
ランビエの絞輪に寄せられちゃっているんですよね。
それで、興奮の伝導で何が一番タイムロスになるか?っていう話です。
興奮の伝わり方は、先ほどもお示しした通り、
刺激→ナトリウムイオン流入→細胞内ナトリウムイオン濃度高まりそれが周りに流れ"活動電流"発生→周囲も閾値に達しナトリウムイオン流入
という流れを繰り返すわけなんですが...
この中で一番時間かかるのは、ナトリウムイオンが細胞内に流入しているときなんです。
だから、結論を言ってしまうと、跳躍伝導というのはそのナトリウムイオンの流入回数を減らすことによって、興奮の伝導を速くしているのです。
どうでしょう。すっきりしましたか?
あと髄鞘の存在価値として他に言われているのは、有限であるナトリウムチャネルをランビエの絞輪に集中させることによってそのナトリウムイオンの流入スピード自体も上げたり、ナトリウムイオンのリーク(細胞外への流出)を避けることでより遠くまで活動電流を到達させる役割があるとか言われています。
ちなみに、あるランビエの絞輪で活動電位の発生したとして、隣のランビエの絞輪の膜電位が閾値に達しないことはないんか?という疑問がわく人もきっとおられるかと思いますが、一応隣の隣のランビエの絞輪を興奮させられる程度の距離にうまくできているようです。
というわけで、以上「跳躍伝導はなぜ速いのか?」でした。
次回は静止膜電位の形成機構について勉強していきます。こちらも結構誤解されがちな話ですので、ちょっと理解に自信のない方は是非ご覧になって参考にしていただければと思います。
【医学部編入】生命科学講義・神経生理学① ~神経細胞の構造~
どうもこんにちは、タマころです。
更新がまた長くあいてしまって、すみません。
正直に言うと、8月上旬は夏休みしてました。
個人的には、8月下旬から9月にかけてがブログを書く時間をまとめて持てるラストチャンスだと考えているので、この一か月半ちょっと頑張りたいです。
さて、今回からは読者からのご要望がありまして、神経生理学という分野を先に勉強していきます。
まあ"神経生理学"とひとくちでいっても、かなり広い学術分野を指しますので、ここでは編入試験で比較的問われやすい部分に焦点を当てて解説していきたいと思います。
具体的には、「発生学」や「神経解剖学」に関連する部分は、おそらくほとんど出題されないのだろうと思います。
仮に出題される場合は、リード文が丁寧であるか、そうでなければもうできなくても結構です(他の受験者と差がつきません)。
というわけで!そこを排除するとなると、ピックアップすべきは...
・神経細胞の構造
・静止膜電位の形成
・活動電位の発生
・興奮の伝導と伝達
あたりになろうかと思われます。
それでは順番にやっていくとして、今日は『神経細胞の構造』について!
早速ですがまあなんといっても、まずは絵を見るのがはやいのです。
http://physicalsupportnagoya.com/article/54913861.html
はい。ご承知の通り細胞体があって核があって、樹状突起があって軸索があります。
ところで、樹状突起と軸索っておなじ細胞体から"にょきにょき"と伸びたものですが、別物なのでしょうか?
これらがどう形成されるか、考えたことありますか?
...まあ、役割が全く異なるので(インとアウトですからね)この状態ではどう考えても別物でしょう。長さも全然違いますし。
ただ、もともと神経細胞が発生する段階では、どれも同程度の長さでにょきにょきと突起が伸びていき、その後何かしらの作用によって一つだけ選ばれて、それが立派に長くなっていき最終的に軸索となるようです。
詳しいメカニズムは知りませんが、なかなか面白いですよね。
ちなみに、樹状突起で情報を受け取って軸索に興奮が伝わり、軸索から次の神経細胞の樹状突起に情報が伝達されるんでしたね。分かっておられるでしょうが念のため。
さて、上の図ですが、あえて軸索のところが細くてなにも描かれていないものを選びました。
というのも、みなさまの中では"髄鞘"とよばれるものが巻いているイメージが結構強いのではないかと想像します。
実際のところ、髄鞘が巻いているものと巻いていないもの、巻いていても髄鞘を形作る細胞は部位によって違ったりします。
そのあたり表にまとまったものを拝借してきたので、以下に示します。
http://oikomarenaika.seesaa.net/article/394762113.html
この表はめちゃくちゃ大事です。
半ば常識ですが、有髄神経は無髄神経に比べ伝導速度が速いです。
その理由は、当然ながら跳躍伝導があるからです。この跳躍伝導については後でまた話します。
そして、有髄といってもその髄鞘すべてがかの有名なシュワン細胞で作られているわけではなく、中枢神経系では希(乏)突起膠細胞によって形成されます。
この事実は、常識だと思っている人とそうでない人(高校生物の知識で「髄鞘=シュワン細胞」の刷り込みがある人)で認識が結構分かれるところですので、このブログを読んだ方は確実に覚えていてほしいところです。
現行過程の高校生物で上記のような一対一対応をしているとは思えないですが(手元にないので確認できていません)、いまだに「髄鞘=シュワン細胞」のイメージは根強いのではないかと思われます。
といった感じで、『神経細胞の構造』としては以上となります。が、先ほど後で話すといった「跳躍伝導」について、少し考えてみたいと思います。
跳躍伝導だと速い
これ、常識ですよね。でも、どうしてですか?と聞かれて答えられますか?
児島「なんでだよ!そんなの飛び飛びだからだよ!みんな高校で習っただろ!」
という声が聞こえてきそうです。あ、児島というのはアンジャッシュの児島のことです。ネタがわからない人はごめんなさい。
上記の理由が、あたかもさも当然正しいかであるように教わり皆それを信じていますが、しかしなぜ「飛び飛びだと速い」って言いきれるんですかね?
よく考えてみると、たしかに速そうな気はするけれど、そんな根拠はどこにもないはずなんです。
だから、本当は別の理由があるわけですね。
長くなってきたのでいったんここで切って、次回(一応)正しいと言われている理由をお話したいと思います。
【医学部編入】生命科学講義・DNAの複製③ ~テロメア~
どうもこんにちは、タマころです。
DNAの複製と修復機構のラスト、『テロメア』についてです。
まあその存在は有名ですし、そんなにここで確認すべき事項はありません。
さて、この手の話はとにかく図を見るのがはやいです!
よくお世話になっているLS-EDI-生命科学教育用画像集-からテロメアの図を取ってきました。
ようは、染色体の端っこにはテロメアtelomereと呼ばれる特徴的な反復配列が存在する。そして、それはDNA複製の際に削られてしまうから細胞増殖を繰り返すについれ短くなっていく、ということですね。
やばい、常識過ぎることをドヤって言ってるみたいで恥ずかしくなってきた^^;
さて、ここからはもう一歩踏み込んだ話をしていきます。
では、その反復配列っていうのはどんな配列なのでしょう?
これは生物によって微妙に変わってくるのですが、哺乳類だと
5'-TTAGGG-3'
となります。
(https://ja.wikipedia.org/wiki/テロメア)
この図はwikipediaから取ってきたものですが、こんな感じで配列にバリエーションがあります。
あと、図内にT-ループとかD-ループとか書いてありますね。ここまで知っている必要があるかはわかりませんが、一応以下紹介します。
これらのループが形成されるメカニズムなんですが、さらに図を細かく見るとテロメアの先端に一本鎖になっている領域(赤線の部分)がありますね、これをG-tailというのですがこのG-tailの存在によってT-ループが作られます。
ご覧の通り、G-tailがテロメア途中の二本鎖の間にもぐりこんじゃうわけですね。そして、もぐりこんで三重鎖みたいなっている部分をD-ループと呼びます。
それで、細かいことはよく分からないのですが、T-ループはテロメアの末端保護機能を担保する重要な分子基盤と考えられているようです。
あと話は変わって、テロメアのクロマチン構造についてなんですが、これはヘテロクロマチンを形成していると良く覚えておいてください。
さらに言うと、ヘテロクロマチンの中でも特に強く遺伝子発現が不活性化されている構成的ヘテロクロマチンという状態をとっています。
ちなみにヘテロクロマチンの反対の状態(遺伝子発現が活性化している)はユークロマチンと呼びますね。この辺りの話、このブログで取り上げたことありましたっけ?
そして最後の勉強事項として、テロメラーゼの存在です。
テロメラーゼは反復単位2連分に相補的なRNAを持ち、テロメア末端の第1の反復単位を塩基対合して第2の反復単位を鋳型としてDNAを合成することができます。
言葉で言うと、何のこっちゃわかりにくいですね^^; やはりこれも模式化したもので見てみましょう。
(http://www.newton-doctor.com/saisentan/saisentan05b.html)
こうやってみると、「なるほどなるほど」と理解できますね。
そして、このテロメラーゼが異常にはたらいてしまうと、その細胞はがん化してしまったりするわけです。試験でよく問われる箇所なので、しっかり押さえておきましょう。
という感じで、テロメアに関しては以上になります。
基本テロメラーゼ・がん化関係でしか出題されないとは思いますが、T-ループとかも今後問われる可能性はあるでしょう。
では次回は、いったん生理学についての記事を挙げて、それが終わったら分子生物学の続きでDNAの組換えについて勉強していきます。
【医学部編入】生命科学講義・DNAの複製② ~複製フォーク~
どうもこんにちは、タマころです。
まともにブログが更新できず、7月が終わりそうです。。
さて、今日はDNAの複製と修復機構の続きとして、複製フォークについて勉強しましょう。
まあ、その存在自体は有名ですよね。高校時代、生物取ってなくても知っているレベルだと思います。岡崎フラグメント、そんなんあったなぁって。
編入試験としては当然ただ知っているだけでは不十分で、「複製フォークとはなにか?」と問われて空で答えられるくらいが理想です。
そこまでいかなくても得点するうえで重要なことは、登場人物をしっかり把握しているか、ということでしょう。
それでは早速、以下の図をご覧ください。
(http://y-arisa.sakura.ne.jp/link/yamadaka/animal-cell/gene/replication.htm)
これがまさに複製フォークですね。
まず赤字で書かれているところに注目すると、リーディング鎖とラギング鎖とあります。
これはさすがにご存知ですね。前回のポリメラーゼの記事で説明した通りDNA複製は5'→3'の方向にしか進まないので、片方は一本できれいにビーって複製されていくのですが(リーディング鎖)、向きが反対になってしまうとそうはいかず途切れ途切れの鎖になってしまいます(ラギング鎖)。
それで、このラギング鎖で形成される複製DNA断片を岡崎フラグメントといいますね。まあこれも常識でしょう。
あとラギング鎖で重要なのは、プライマーが必要だということです。プライマーは短いRNA断片で、これを手本にDNAポリメラーゼは複製を開始できるのです。
なお、RNAであるプライマーはすぐさま分解されて、その部分はDNA鎖に置き換えられます。
さて、ここまでは基本事項で、この先の登場人物が編入試験的には問われうる箇所になってきます。
このDNA複製という一連の流れで登場する順にご紹介していきます。
まず最初は、トポイソメラーゼという名の酵素です。
あいにく上の図には描かれていないのですが、この酵素によってはじめにDNAの「ねじれ」が解消されます。
(http://kusuri-jouhou.com/creature2/reproduction.html)
DNAを複製するにはらせん構造をほどかないといけないわけで、トポイソメラーゼなしにはそれは不可能ということです。
一本の二重らせん構造というのは理論上絡まることはないらしいのですが、現実にはDNAは非常に長い分子になるので両端が固定されてしまい、局所的にはゆがみやねじれが発生してしまうようです。
次に、ヘリカーゼという酵素です。
こちらは図に描かれていますね。DNAのらせん構造を巻き戻す役割をしています。ようは二本鎖DNAを一本鎖DNA×2の状況にしてくれているわけです。
あとはリガーゼですね。
リガーゼは名前のまんまです。英語にするとligase、つまりligateする酵素です。
ligateは「結ぶ」とか「くっつける」っていう意味の単語ですね。
図の通り、前後の岡崎フラグメントをくっつけます。こうすることで、ラギング鎖も最終的には一つの長い鎖になることができるのです。
というわけで、知っていなければならないのはこんなところでしょうか。
最近は高校生物でも詳しくやるでしょうし、編入試験では今日お話したあたりは常識としてもっと細かい分子メカニズムが出題される可能性があります。
その場合にしても、ここに書いてある内容が頭に入っていないと先に進めないので、もしあまり理解しきれていないという方は今一度よく確認して、その上でより細かい話に手を付けましょう。
では、次回はテロメアについて勉強します。