再受験・学士編入で医学部を目指そう

20代後半、男。獣医学部卒→某国立医学部に編入。 医学部受験情報の発信や編入向けの生命科学の解説をしていきます。編入試験対策の教材作成も考え中。編入に関するご相談は tamakoro1k at yahoo.co.jp (at→@)までお気軽に。

【医学部編入】生命科学講義・DNAの修復機構② ~CRISPR/Cas9システム~

お久しぶりです。本業(国試勉強)の方がさすがに余裕なくなってきました。

とはいえ今後も、不定期ながらもほそぼそ更新していけたらなと思います。


さて、本日の話題はCRISPR/Cas9(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats/CRISPR-ASsociated proteins 9)です!

読み方は「クリスパー・キャスナイン」。イマドキ知らなかったらちょっとヤバイやつですね。ノーベル賞候補ともいわれている科学技術です。


それでどういう技術なのかというと、一言でいえばゲノム編集です。
非常にざっくりとしたワードではありますが、一般的にそう表現されます。

もうすこし具体的に言うと…

ゲノム編集=特定の遺伝子のノックアウト・ノックインができる

ということになります。
今までそこそこ難しかったノックアウトが非常に簡単にできるようになり、応用法は無限大です。

逆に言えば、ヒトを含む遺伝子改変生物が容易に作れるため、倫理的な問題もはらんでいます。

例えるならば、僕あんまり詳しくないのですが、ガンダムで出てくる「コーディネーター」というやつですね。


それで、じゃあどうやってゲノム編集するのかっていう話ですが、まず以下の図をご覧ください。
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よくこのような模式図で説明されます。

もともと細菌が持っていた免疫システムを応用したもので、本来は細菌の体内に入ってきた外来DNAを破壊するための装置だったんですよね。

その本体が、図の白い雲みたいに描かれている"Cas9"という名のタンパク質で、これが「特定のDNA配列を認識」して配列中のDNAを切断します。


それで、この切断するまでの過程でいくつかポイントがあります。


一つ目が、どうやって「特定のDNA配列を認識」するか?です。

それを可能にする重要な要素として"guide RNA"(sgRNAと略したりします)なるものが存在します。Cas9はそれと相補的な配列を認識します。

そしてもう一つが、guide RNAのすぐ隣に存在する"PAM配列"(図中オレンジの3塩基)です。Cas9PAM配列を目印にして、その近傍のDNAを切断することができます。


そしてここからが重要です。

このCas9による切断二本鎖いっぺんに切断するため、鋳型がありません。

ですので、前回の記事でもご紹介した通り、多くの場合「非相同末端結合」により修復されます(図中左のルート)。

この修復機構は非常にアバウトなので、高確率で塩基の挿入や欠損が起きてしまうわけですね。

その結果、切断された部位がコードしていた遺伝子はつぶれてしまいます。すなわちノックアウトされるわけですね。


また、ドナーDNAとして、切断部位周囲に相補的なDNA配列を予め導入させることによって、「組換え修復」を起こすこともできます。

それによって任意の配列を挿入することができ、遺伝子を一部改変したり、導入したりできます。すなわちノックインですね。



上記のようなメカニズムで、CRISPR/Cas9はこれまでの技術と比べ容易にゲノム編集することができます。


ほんとすごいですね。


さて、ではこれを実際に、例えば培養細胞のある遺伝子のノックアウトを行おうとすると、具体的にどのような手順を踏むことになるでしょうか?

それを以下、箇条書きで示していきます。


CRISPRのプラスミドを購入する(ふつう薬剤耐性遺伝子もコードしてある)。

ノックアウトしたい遺伝子中のある配列に相補的な配列をプラスミドの所定の箇所にインサートする(guide RNAになる)。

培養細胞にプラスミドをトランスフェクションする。

薬剤セレクションをする。

セレクションされた細胞でシークエンスorウエスタンブロッティングをする

ノックアウト細胞が存在することを確認する(バンドが薄くなってる等)。

クローニングする(細胞一個一個にして、そこから増やす)。

細胞が増えてきたら再びウエスタン等でチェックする。

ノックアウト(バンド消失)を確認する。

ノックアウトにより生じると予想される変化を何かしらの実験でとらえる。

以後の実験に用いる。


実験目的によって若干の違いはあるにせよ、だいたいこのような流れになるかと思います。




はい、今日の内容は以上になります。

まあCRISPRはホットとはいえ、出題するとなるとどこが問われるか正直予想しづらい感はあります。
なので、ひとまずこの記事で扱った事項は把握しておいて、それで対応できなければ仕方がないというスタンスでいくしかないでしょう。

では、次回はセントラルドグマあたりを勉強していきたいと思います。

【医学部編入】生命科学講義・DNAの修復機構② ~二本鎖の損傷~

どうも、タマころです。

前回に引き続きDNAの修復機構ということで、本日は二本鎖の損傷について勉強しましょう。


まず前回も登場したこの図を確認。

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この右側の「NHEJまたはHR修復」と書いてある方です。

略語だとわけわからんですよね。それぞれ

NHEJ:非相同末端結合
HR:相同組換え

といいます。

説明の順序としてはまず、より一般的であるだろうHRの方からします。


相同組換え(HR)

しくみ自体は減数分裂で起きるアレです。それが、DNA損傷の際に応用されるわけですね。

DNAのある部分が二本鎖とも損傷を受けると、それ単独では鋳型がなくなってしまうので、もう一つの染色体の同じ部分からDNAを拝借してくるのです。

そして、それを鋳型にDNAを合成しなおして正しく修復することができます。

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(黒沢 綾 and 足立 典隆、2014、Isotope news)(一部改変)

事象としては上図の通りこの程度なのですが…
もしそれにかかわるタンパク質名などを答えさせるとなると、話はややこしくなってくるかと思われます。

しかし、ここではそこまで追っかけないことにします。まあ編入受験生で知ってる人ほとんどいないでしょうから。


ただ、その中でやたらピックアップされるワードが一つあります。これは覚えておいて損はないと思います。

それは…

ホリデー構造

というものです。

図の赤丸DNAがクロスした部分の構造を指します。

僕は専門家ではないので残念ながらこの構造がなぜ重要なのかわかりませんが、とにかくHRについて調べるとよく見かける単語です。


…という感じで、次は非相同末端結合にいきます。


非相同末端結合(NHEJ)

かっこいい名前してますよね。僕ははじめてこの名前と略称を聞いたとき、そう思いましたもの。

ちなみにそのはじめて聞いたときというのは、僕がCRISPR/Cas9システムを使った実験をし始めたときです(この実験手法については次回紹介します)。

てかこの4文字、臨床で有名なジャーナルのNEJMと空見します(笑


さて、余談はこのくらいにして、この修復法のメカニズムの特徴は鋳型を用いずテキトーに直すというところにあります。

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(黒沢 綾 and 足立 典隆、2014、Isotope news)

おそらく本当にランダムです。さらに、一塩基損傷を受けて一塩基ランダムに修復するならまだいいですが、数塩基の挿入や欠損が生じてしまうこともあります。

二本鎖の両方失われている状況は、実はそもそも何塩基の損傷を受けたかすらもわからなくなってしまうわけですね。

そうすると、たとえば数塩基の挿入が入ってしまうとフレームシフト変異が起きて正常なタンパク質が合成されなくなってしまったりします。


というリスクはあるものの、実際のヒト細胞では(高度は動物ほど)二本鎖損傷の際はNHEJの依存度の方が高いらしいです。

これにはさまざまな理由が考えられますが、一つに高等動物では反復配列が多いことが要因としてあるようで、反復配列で欠損が起きると正しく鋳型が取れなくて染色体の欠失や転座を引き起こしてしまう可能性があるとのことです。

たしかに、正確に修復できる可能性が高いけど、時に大事故を起こしうるなら、まあタンパク質いっこくらいしょうがないかっていう気持ちもわかりますね。


これら修復機構にかかわる因子の異常

HRにかかわる遺伝子に異常があると、家族性乳がんなど細胞の発がん率が高くなるということが分かっているようです。
ほかにも、ファンコーニ貧血といった先天性遺伝性疾患の原因となったりします。

NHEJではちょっと違って、こちらの遺伝子に異常があると主に免疫系に影響があり、重症複合型免疫不全(SCID)というのも招きます。

ちなみに、SCIDは「スキッド」と読みます。





というわけで、今日の話は以上になります。

一本鎖の損傷とあわせて、それら修復機構の種類と特徴を押さえていってもらえればいいかと思います。

次回は、本文中でも言及しましたがCRISPR/Cas9システムというゲノム編集技術について解説していきたいと思います。

【医学部編入】自作テキスト 組織学・各論①【鹿児島対策】

どうも、タマころです。

【鹿児島対策】組織学自作テキスト第二弾です!


↓第一弾・総論↓
tamakoro.hatenablog.jp


今回は各論一つ目になります。
人体の組織はそれなりにたくさんあって一回では全てまとめきれないため、二部に分けてお届けさせていただきます。

各論①の内容は、血液・リンパ組織・消化器(口腔・食道・胃・小腸・大腸・肝臓・膵臓というセットになっております。


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【医学部学士編入学試験対策 組織学各論①】

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よろしくお願いします^^

【医学部編入】生命科学講義・DNAの修復機構① ~一本鎖の損傷~


どうも、久々の生命科学講義になります。

最近、本業の方がしんどいことになっておりまして、こちらの更新が疎かになってしまっています。

講義シリーズを年内に終わらせたいという野望はやはり果たせないのか・・・


さて今回は、だいぶ前に途中だった分子生物学の内容としてDNAの修復機構について話を進めていきます。


まずは全体像を把握しましょう、ということで、以下『イラストレイテッド生化学 原書6版』から引用した図をお見せします。

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略語ばっかりで恐縮ですが、ここで僕が言いたいのは図の「DNA損傷」の矢印下の左側がようは一本鎖の損傷で、右側が二本鎖の損傷であるということです。

そしてそれぞれ、左側が種類(一番下の段)、右側が種類(NHEJまたはHR)あるよというのを予め示しておきます(修復の種類が左右で段が揃ってなくて非常にわかりづらい・・・)。


では、本日は左側の一本鎖の損傷について解説していきます!


ヌクレオチド除去修復(NER)

上図でいう「紫外線によるチミジン二量体」のことです。

そもそもチミジン二量体ってなんだ?って話ですが、これは細胞に紫外線が照射された際に主にチミン共有結合して二量体化することを指します。

少ないながらシトシン同士も二量体を形成することもあるので「ピリミジン二量体」っていう方が一般的ですね。

※ピリミジンとはシトシン、チミン、ウラシルのこと。それ以外のアデニンとグアニンは「プリン塩基」とよばれる。こちらを"Pure Ag"(純銀)と覚えておけば、ピリミジンも自ずと分かる。

修復方法としては、まずその二量体の両端を切断します。その時にはたらく酵素紫外線特異的エンドヌクレアーゼといいます。

次にその除かれた部分をDNAポリメラーゼにより元通りに修復し、最後にDNAリガーゼでくっつけます。

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(遺伝子の復帰・修復)


ちなみに、もう一つの修復法として、光回復というものがあります。
ただ、この経路は哺乳類には存在しないもので、主に細菌で話題になるようです。

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(遺伝子の復帰・修復)



ミスマッチ修復(MMR)

これは、DNAポリメラーゼがDNAを複製した際、校正機構をもってしても見逃されてしまったエラーを修復する機構です。
なので実際には「損傷」とはいえないものなのですが、まあ広い意味で捉えていただければと思います。

まずはミスマッチが存在するDNA鎖(ミスマッチのどちらが娘鎖なのか)を同定し、その塩基の両端をエンドヌクレアーゼによって切断します。

その後は、上記のNERと同様にDNAポリメラーゼで修復・DNAリガーゼで再結合という流れになります。

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(遺伝子の復帰・修復)

図のように、原核生物では親鎖の所々がメチル化されていることでどちらが親鎖かを認識するのですが、真核生物ではそのメカニズムはまだ正確にわかっていないようです。


塩基除去修復(BER)

ある塩基が何らかの原因で異常な塩基になってしまった際にはたらく修復機構になります。

"異常な塩基"というのは、シトシンが脱アミノ化することでウラシルとなったり、グアニンやアデニンが酸化してしまったりすることを指します。

それで、その異常な塩基をまずはDNAグリコシラーゼという酵素が認識して、ヌクレオチド塩基部分のみを除去します。

その結果、一塩基部分のみぽっかりと穴が開くのですが、なぜかその部位にはAPサイトapirimidinic / apurinic site)というかっこいい名前が付いています。

さて、その部位を今度はAPエンドヌクレアーゼというのが認識し、5’側のみを切断します。その後結局もう片方も切断されて、最終的にはやはりDNAポリメラーゼで修復・DNAリガーゼで再結合されます。

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(遺伝子の復帰・修復)




というわけで、一本鎖の修復に関しては以上になります。

次回は二本鎖の修復、そしてその次はCRISPR/Cas9の説明をしていこうと考えています。

それでは。

【医学部編入】組織学・総論 自作テキスト【鹿児島対策】

どうも、タマころです。

約一か月ぶりの更新になってしまいました。。。

しかし、この一か月間何もしていなかったわけではありません。
twitterの方では逐一報告しておりましたが、このたび医学部学士編入試験向け組織学のテキストを作っていました!(パチパチ)


これ、通常よくあるような資料ではなくて、なんとPowerPointで作製しています。

あまりこういうテキストってなかったと思いますので、自分で言うのもなんですが斬新ですね。

ちなみに、来月の鹿児島大が組織学をちょくちょく出題するのでそれを意識してということになります。


ということで、今回は「総論」ということで作らせていただきました。

予定ではこのあと「各論①」「各論②」をリリースしていく予定です。


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【医学部学士編入学試験対策 組織学総論】

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かなり体系的に仕上げたつもりですし、過去問演習もついていますので絶対に損はしないと思います!(一応営業)

それでは、10月はもうちょい更新できるように頑張ります。

【医学部編入】生命科学で問われる計算問題シリーズ

どうも、タマころです。

今日は、タイトルにあるように編入試験で問われがちな計算問題について取り扱っていきたいと思います。

※この記事を作るにあたって、多数のご協力をいただきました。ありがとうございました。


以下トピックを列挙して、その下に関連サイトを紹介しておくので、そこにアクセスして各々で勉強してください。

全てを自分で解説するのは、分量的にも技量的にも難しいので…


細胞周期
http://d.hatena.ne.jp/pilot_doctor2/touch/20110221/1298268551


PCRによる塩基長、増幅量計算
http://bbbbiologybooksboxing.blogspot.jp/2012/02/pcrdna.html?m=1


平衡電位(ネルンストの式)
適切なWEBサイトが見つからなかったため、名古屋大学医学部編入試験からの抜粋。

糸球体濾過量
http://next-pharmacist.net/archives/2155


クレアチニンリアランス
http://next-pharmacist.net/archives/2187


ミカエリス・メンテン式
http://examist.jp/chemistry/natural-polymer/michaelis-menten/


緩衝液(ヘンダーソンハッセルバルヒの式)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式


ギブスの自由エネルギー
http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/general.htm



以上になります。

計算問題はなんだかんだどの大学でも1,2問出題されたりするので、できるようになっておくとやはりアドバンテージがありますね。

全てできるようにならなくても良いでしょうが、もし理解できそうなものがあれば、これを機会に深く勉強してみてください!

【医学部編入】生命科学講義・神経生理学⑤ ~興奮の伝達~

どうも、タマころです。

最近ブログの更新がんばれてます!


さて、今日は神経生理学のラストで興奮の伝達というテーマでやっていきますね。


まずはじめに、言葉の確認をしたいです。

伝達というワードなのですが、結構伝導と混同されている方が多いようです。


気を付けてください。


伝達は「ある神経細胞から次の神経細胞に興奮が伝わること」を指し、

対して伝導は「神経細胞内で活動電位が移動すること」を指します。


神経"伝達"物質 や 跳躍"伝導" といった風に、地味に使い分けられていますね。


では、本題に入っていきます。今日のポイントは3つ



神経伝達物質

基本は

アセチルコリン と ノルアドレナリン

ですね。

ただ、 交感神経=ノルアドレナリン という一対一対応は危険です。

というのも、交感神経でも節前と節後の間の伝達は
アセチルコリン
ですからね。


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(一歩一歩学ぶ生命科学)

初めて知ったという方は、よく覚えておいてください!

ちなみに、交感神経節後繊維でもアセチルコリンを放ってしまう例外もあったりします(汗腺)。


めんどくさいですね。


と、さらにもう一つ注意点があります。

それは、上記二つ以外に神経伝達物質はいっぱいあるという事実です。

さっきまでの話は末梢神経に限ったことで、中枢神経系ではグリシンアスパラギン酸グルタミン酸といったアミノ酸類やセロトニンヒスタミンなど数多くの神経伝達物質が存在します。

編入試験でどこまで問われる可能性があるか判断が難しいところですが、アセチルコリンノルアドレナリンだけじゃないってことだけでも頭に入れてもらえればと思います!


シナプス後電位

今日の話のメインになります。

シナプス後電位...きっとこの単語を初めて聞いたという方もいるでしょう。

読んで字のごとく、「シナプスの後ろ側(情報を受け取る側)の神経細胞で発生する電位」のことを指します。


当然、シナプスの前側の軸索終末から神経伝達物質が放出されて、それによって後ろ側の神経細胞がシグナルを受けるのですが、もしただ興奮性の刺激を受けるだけだったらわざわざこんな用語持ち出す必要ないですよね?


逆を言えば、これは結構意味のあるワードなのです。


それはなにかというと、はやい話、抑制性のシグナルもあるということですね。


そこで、興奮性抑制性のシグナルをそれぞれ

興奮性シナプス後電位
excitatory post-synaptic potential(EPSP)

抑制性シナプス後電位
inhibitory post-synaptic potential(IPSP)

と呼びます。一般に英語の略語を多用するので、この英字4文字は是非覚えましょう。


それでじゃあ、それぞれどうやって興奮させたり抑制させたりしているかなんですが、これも結構単純で、シグナルを受けることで開口するチャネルの種類が違います

EPSPの場合はナトリウムチャネルです。なので当然脱分極します。これは普通ですね。

それでIPSPはというと、この場合はClチャネルが開きます。

Clイオンは細胞外のほうが濃度の高い陰イオンなので、ナトリウムと同じように細胞内に流入するのですが、こちらは反対に過分極を誘導します。


つまり...

Naチャネルが開いて脱分極する(膜電位が上がる)のがEPSP

Clチャネルが開いて過分極する(膜電位が下がる)のがIPSP

ということになります。


あとIPSPのポイントは、情報伝達物質の種類ですね。

代表例はγアミノ酪酸、通称GABAです。

チョコの製品の名前になってるあれです。他にもいくつかあるんですがこれだけでも覚えてください。


EPSPとIPSPの意義

結論を言えば、脳の活動性を制御していることになります。


中枢神経系では、無数の神経細胞同士がネットワークを形成していて、非常に複雑化した構造になっています。

それで、ある樹状突起(シナプスの後ろ側)に注目したとして、そこには複数の神経細胞シナプスを形成してシグナルを伝達させています。

そのときに、EPSPとIPSP同時に起こっているわけで、それらの総和によって樹状突起で発生する膜電位というのが決まっていきます

EPSP優位であれば、当然閾値に達しやすくなるでしょうし、反対にIPSPが優位だとなかなか活動電位は発生しません


これは人間の場合、思考や言動に現れてくるわけですね。

EPSP優位だと感情が激しくIPSP優位だと抑うつぎみになったりします。


実際に例えば、向精神薬の一種であるベンゾジアゼピン抗不安薬は、GABAA受容体に作用してClチャネルの開口頻度を増加させてIPSPを強めることで抗不安作用を示します。

ようは"落ち着く"わけですね。


覚えにくいということであれば、先ほども例示したチョコのGABAを思い出してください。
経口摂取で本当に効果があるかは未知数ですが、まあ編入受験生にとってはいい題材です。




というわけで、いかがだったでしょうか。

どうもこの単元は、高校生物で習う末梢神経での話が刷り込まれているせいかなかなか理解しづらい分野なのですが、この記事で少しでも理解のとっかかりになればいいなと思っています。


神経生理学はこれで以上になります。


編入試験もこれから終盤に差し掛かってきて、9月は連戦もありますが、体調にお気をつけて受験生の皆様には頑張っていただきたいと思います。