再受験・学士編入で医学部を目指そう

20代後半、男。医師・獣医師。 医学部受験情報の発信や編入向けの生命科学の解説をしていきます。2018年3月31日より医学部編入受験生のためのウェブサイトMediTransを立ち上げましたhttps://www.meditrans.solutions

【学士編入】非生命系出身者が独学で生命科学を習得することはできるのか②

前回、「生命科学を学ぶのに高校生物の習得は必須か?」という問いを投げかけて終わりましたが、では早速僕なりの答えを述べさせていただきます。


端的に言えば、僕はノーだと考えます。


しかし、これにはいくつか補足があります。


まず、ノーと言える最大の理由は、もはやこの2つは別の教科だからです。

一般的には、高校生物は生命科学の下位互換のニュアンスで語られることが多いですが、実はそんなことないんじゃないか?というのが僕の主張です。

むしろほぼ並列関係にあってかついくつかの単元がオーバーラップしていると言った方が正確でしょう。

それだけ近年の高校生物で学ぶレベルが高いとも言えますし、また別の側面から見れば、これが生物学の持つ特色だということです。

前回の記事で言及した、"積み重ねの要素が薄い"ということですね。

この現象は、高校物理がいつまでも古典的なニュートン力学から抜け出さないのと対照的だと思います。

というわけで、まず基礎基本ということで高校生物を丁寧に復習するところから始めがちですが、思いの外非効率なんでないか?と思うのです。


ここまでで、一つの方向性が見えてきましたね。


独学ポイント①: 高校生物から復習するな!


でまあ、そう言い切るのは非生命系学部出身からすると非常にリスキーなの確かですが、実は他に高校生物からやる弊害というのがあります。

それは… 途中で心が折れてしまう可能性があるということです。

高校生物って受験の一教科ですし、やっぱり相当のボリュームがあるんですよね。
きっと本気で復習したら、大学院に通いながらとかならそれだけで半年はかかってしまうと思います。

その割には、結局編入試験の問題では知識不足だったりして、不完全なままです。

ということで、いきなり大学レベルの内容に入ってしまいましょう。


さあ次は、でもいきなり分厚い大学の教科書に手を出すの?という議論になりそうです。

それこそ心が折れますよね…

どうしましょう?
ここでまた僕は思い出したのです、自分がどうやって生命科学を身に付けてきたか。

それで思ったのは、やっぱり一個一個地道に理解していったんだな、ということです。

別に重厚な教科書を1ページ1ページめくって勉強してきたわけじゃなかったな、と。

だから僕からの提案は、もっと内容を絞った薄めの本を各単元ごと購入しよう、です。

というわけで、これをちょっと言い換えて2つ目のポイント


独学ポイント②: 得意分野をつくろう!


単元ごと個別で参考書を買うのには、主に上記の意図があります。だって、複数の本を並列に読んだらそれこそ分厚い教科書読んでるのと変わらないですからね。

それで、この独学ポイントには大きく2つのメリットがあります。それは…

・勉強が続きやすい

・本番で大当たりする可能性がある

一つの分野ばかりやることでそれに対する理解が深まっていって、無理せず勉強が続けられると思うんですよね。

さらに、深く理解したものは忘れにくいです。これも大きなメリットかと思います。

そしてなんと言っても2個目のメリット、得意分野が本番の試験で出題されたときに大きなアドバンテージとなります!

これは僕も経験がありますし、実際すごく精神的に優位に立てますよ。


まあこの勉強法の問題点は、その他の得意ではない分野をどうするか?でしょうかね。
それは僕の講義を読んでいただければおそらく最低限の知識・理解はできるはずなので是非これからも当ブログに目を通していただければと思います。



さて、とはいえ上記ポイント2つだけではまだまだ独学のハードルは高いだろうと思います。
ということで、次の記事でさらに2つのポイントを挙げていきますね!

それでは次回に続きます。

【学士編入】非生命系出身者が独学で生命科学を習得することはできるのか①

どうもこんにちは、タマころです。


ありがたいことに数名の方から編入に関するご相談を受けたりするのですが、その中で最も多い質問は


生命科学はどうやって勉強したらいいですか?(どうやって勉強しましたか?)


というものです。


何を隠そう僕も受験生当時、某予備校の某YOKO集を独自入手したもので、大抵「あれをやるのが良いよ」とアドバイスしているのですが…

まあでもその程度のアドバイスならみんなするだろうし、あの本はまとまりはいいけどゆうてそんなに分かりやすいわけではないんですよね。

そこで僕のブログ講義…と言いたいところですが、まだ全然未完成ですし、完成したところで人に薦められるほどの代物ではございません。


というわけで、この度ちょっと考えてみました!


コンセプトとしては、生命系学部出身ではなく編入専門予備校にも通わず、完全独学で生命科学を習得する勉強法です!


これだけ聞くと、夢のような話、絵空事ですよね。

まあ実際、ほとんど有りえない話かもしれません。
でも、どうしても独学でやらなきゃいけない人たちにとって少しでも道しるべになれるように、できる限り現実的な方法をご紹介します。




では、いきなり方法論を述べるのもなんなので、まず"生命科学を学ぶ"とはどういうことか考えていきましょう。(今日の話はココまで)


これは僕の経験になってしまうのですが、僕は高校生のとき生物が大っ嫌いでした。当然受験は物理選択でしたし、授業でやった生物はとりあえず期末テストでそこそこの点を取れればいいやと思っていました。

そして大学に入り獣医学部で専門の勉強をしたら、ひとまず代謝やホルモンをはじめ生化学・生理学全般は分かるようになりました。

しかし分子生物学は以前苦手なままでした(高校レベルもわからない)。

5年になり研究室に配属になったら、研究を進める過程である程度細胞内の細かいことや実験に関する知識がついていきました。

さらに編入試験の勉強で、抜け抜けだった分子生物学の理解を深めていきました。意外かもしれませんが、獣医学部の最終学年でもこの勉強はかなり新鮮でした。

そして、医学部に入ってまた基礎医学からやり直して現在に至ります。


まとめると、高校までは素人だった僕も、足掛け9年くらいかけて今の状態になったわけです。

でもそれでも、高校生物でわからないことがまだいっぱいあります。


生物・生命科学を学ぶということは、そういうことなんです。


つまり、数学や物理と比較して積み重ねの要素は薄く、各々が面白いと思うことを追求している側面の強い科学分野なのですね。

ちなみ主観ですが、医学は積み重ねの要素が強い印象があります。それは国中の医師の診療レベルを一定以上に保つために必要なことだと思います。


さて話を戻すと、生命科学の理解というのはやはりどうしても時間がかかるし、ある程度"経験"みたいなところもあるということですね。


ではここで質問ですが、「編入の生命科学を学ぶためには高校生物の習得は必須か?」

みなさんどう思いますか?

これに対する僕の答えは… 疲れてきたので次の記事で示したいと思います。

【医学部編入】生命科学講義・細胞の死と癌化① ~ネクローシスとアポトーシス~

どうもこんにちは、タマころです。


今日は2017年4月1日、世間はエイプリルフールですね。

ネタ記事を期待したいところですが、残念ながら今日もいつもの調子で講義していきます。

むしろ間違った情報を提供してしまわないよう、気を付けて記事を書いていきたいと思います。



というわけで、今回のトピックは細胞死です。

わりかし問われる分野ですので、ここで説明した内容は最低限理解するようにしてくださいね。



まず、細胞死には大きく2種類あります。


ネクローシス と アポトーシス


さすがにご存じですかね。

ネクローシスは日本語で言えば「壊死」になります。

対してアポトーシスは「プログラム細胞死」と言ったりします(同義ではない)。


2つの違いは当然いくつかありまして、よく表とかでまとめられたりするんですが、なかなか覚えられなくないですか?

やはり記述形式でその違いを出題されたりするので、正確に覚えているのが望ましいのですが...

ここではざっくりと一言で言い表すと


ネクローシス・・・細胞大きくなる→破裂する→内容物でる→炎症起きる

アポトーシス・・・細胞小さくなる→ちぎれる→粉々になる→アポトーシス小体


といった感じです。スタートから真逆ですね。

ネクローシスではいろいろ膨らむのですが、とくにミトコンドリアが著明に腫大することが重要のようで、教科書やネット等のネクローシスの説明では必ずといっていいほど登場します。
なので、当然記述するときも必須項目になるかと思います。


そして本題のアポトーシスですが、もうほんと、アポトーシスだけで大問一つ作れるんじゃないか?というくらい問われる部分が多い気がします。

それほどメカニズムがよく分かっているってことですよね(それだけ研究者たちの興味がそそられる現象)。


まず、アポトーシスにおいて最も重要な因子(群)は、カスパーゼと呼ばれる酵素です。

カスパーゼにいくつか種類があって、それぞれ番号がついてます(またこれが厄介)。


それで、とても大事なこととして、アポトーシスが誘導される経路には内因性経路外因性経路と2つが存在します。

ここがなによりポイントです。このメカニズムはある程度知ってないとマズいです。どうも編入試験的にはこのあたり好物なようで。


このまま続けると記事が長くなってしまいそうなので、次回それぞれの経路について詳しくみていきましょう。


今日は短めですがこの辺で。

アドレス不詳でメールの返信ができない?

すみません、本題とは全然関係のない話です。


今日の夕方ごろ(もう日付は変わってますが)一件のメールをいただいたのですが...
from欄にINVALID_ADDRESS@.SYNTAX-ERROR. と書いてあって、返信ボタンを押してもToには相手のメアドは表示されないという事態が起こりました。

初めての事態で、??だったのですが、調べたところスマホの設定の関係で起こる現象のようです。


手かがりとしては、文末「iphoneから送信」と書いてあるメールです。というわけで心当たりある方はもう一度僕まで連絡ください(本文中にアドレスを明記してくだされば確実かと思います)。


よろしくお願いします。



…しかしタマころ模試で疲れ果ててしまってこっちの更新ができていない。。。

【医学部編入】タマころ模試 生命科学【対策】

どうもこんにちは、タマころです。


twitterでフォローされている方はこの企画の存在はすでにご存知かと思いますが、この度医学部学士編入向けの模試を作成しました!

以下のリンクにアクセスすれば、問題をDLすることができます。

医学部編入試験を受ける予定の方は、軽い気持ちでいいので是非解いてみてください^^

おそらくカルス模試に比べると簡単に感じるかと思いますが、いくつかの問題は実際の過去問から改変して作ったりしてるので実際の難易度とはそんなに乖離はないはずです!


問題用紙
https://drive.google.com/open?id=0Bz1Z_Ro7Uo9sOW5CNjRXaHZNbGM

解答用紙
https://drive.google.com/open?id=0Bz1Z_Ro7Uo9sS3ZGQ1BIWWNmYk0


それと模範解答についてなのですが、現段階ではこれはちょっと有料にしようかなと考えています(1000円くらい?)。

正直この程度の問題であれば、自分で調べれば十分答えはわかりますし、わざわざ僕から入手する必要ない気もしています。
ただ、一応これ作るのに計8時間ほどかかったので、寄付するつもりで解答をもらってくださるならそれはそれで嬉しいです。


編入受験生の方々には少しでもこの模試を参考にしていただいて、いい点とれたら自信を持ってもらって、抜けがあればそこをよく復習するようにしてくださいね!


それでは、解いた感想とか聞けたららすごく嬉しいので、もしよかったらtwitterのDMやメールでコメントいただければと思います。

【医学部編入】生命科学講義・細胞の周期と増殖② ~細胞周期の制御メカニズム~


どうもこんにちは、タマころです。

前回の続きになります。実際に編入試験で問われる、少々細かい話になっていきますが頑張りましょう。


ポイントは2点です。

・細胞周期を促進するメカニズム

・細胞周期を抑制するメカニズム

です。まあ、当たり前ですね。


まず促進する方ですが、こちらは兎にも角にも

サイクリン と CDK

という2つの分子がキモになります。

CDKは、cyclin dependent kinaseの略です。

これらは複合体を形成してはじめて機能します。


これからサイクリン○とCDK○と、○には数字が入りますが、そういう名前のものがいくつか登場します。

覚える事が多くて嫌になっちゃいそうですが、頑張りましょう。

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M期開始の制御

M期に関与するサイクリンとCDKは

サイクリンB-CDK1(Cdc2)複合体

です。
紛らわしいですが、上図のCdc2はCDK1の別名になります。

この複合体はG1期やS期にも存在はしているのですが、CDK1の残基がいくつかリン酸化されているので不活性化されています。
それがM期になると、Cdc25フォスファターゼという酵素がCDK1を脱リン酸化して、サイクリンB-CDK1(Cdc2)複合体の酵素活性が著明に上昇します。

このような制御によって、この複合体はM期に特異的に機能するようになっています。


S期開始の制御

これは図にあるように、2つの複合体がオーバーラップして関与します。

早めに作用するのは、

サイクリンD-CDK4/6複合体

というものです。

G1期に増えていったサイクリンD-CDK4/6複合体は、癌抑制遺伝子として有名なRbタンパク質をリン酸化します。
Rbは転写調節因子であるE2FとDPというタンパク質と複合体を形成しているのですが、リン酸化するとこのRbが遊離します。

そうすると、E2Fが活性化されてDNA複製に必要な遺伝子群の発現を誘導します。
その遺伝子群には次の登場人物である

サイクリンE-CDK2複合体

が含まれます。サイクリンE-CDK2複合体もRbタンパク質をリン酸化させることができ、それにより自身の発現はさらに亢進し、結果的にDNA複製に必要な遺伝子群の発現が加速します。

このようなメカニズムによって、DNA合成期であるS期が開始します。


細胞周期を抑制する因子

これにはCKI(cyclin kinase inhibitor)とよばれる分子群が関与します。

サイクリンD-CDK4/6複合体は主に

p15,p16,p18,p19

サイクリンE-CDK2複合体は主に

p21,p27,p57

と呼ばれるCKIによって活性が抑制されます。

正直この数字は覚えなくていいと思うのですが、それぞれ阻害の仕方がちょっと違うのでそこは知っておいてもいいかもしれません。

上の4つは、サイクリンと拮抗してCDKと結合することで作用を抑制します。

対して下の3つは、サイクリン-CDK複合体に結合して作用を抑制します(複合体の形成は邪魔しない)。

ちなみに癌抑制遺伝子界で最も有名であるp53は、その多彩な機能の一つにp21の発現を促進する働きがあります。
p21はサイクリンD-CDK4/6複合体とサイクリンE-CDK2複合体の両方に結合することができ、細胞周期を強く抑制します。

したがって、p53は細胞終期を停止する方向にシフトさせられる重要なタンパク質といえます。


チェックポイント機構

細胞には、いま自分がこのまま次のステップに進んでいいのかどうか自問自答する機構が備わっています。それをチェックポイントと呼びます。

とりあえずどこにチェックポイントがあるかが重要です。上図に線が入っているので分かる通り、大きく3箇所存在します。

M期チェックポイント・・・正常な紡錘体が形成されたか、秩序あるM期進行か、がチェックされます。

G1/Sチェックポイント・・・増殖条件が良いかどうか、DNAが損傷していないか、がチェックされます。

G2/Mチェックポイント・・・正常なDNA複製が完了したか、DNAが損傷していないか、がチェックされます。

それぞれチェックしたい項目を実際にチェックするわけなのですが、その分子メカニズムはどれも複雑で(僕が全然理解していない)仮に出題されるなら十分な誘導があると予想されるので、もし出たらその場で頑張って考えて乗り切りましょう。

知識としては上記のやんわりした理解でいいかと思います。






...というわけで、細胞周期の制御メカニズムは以上になります!

いろんなタンパク質が出てきてちょっとしんどいですね^^;

まあわかってくると案外クリアになるので、少し時間をかけて勉強されることをお勧めします。その方が忘れにくいかと思います。

それでは、また。

【医学部編入】生命科学講義・細胞の周期と増殖① ~細胞周期概論~

どうもこんにちは、タマころです。

今回から細胞周期について勉強していきましょう。


細胞周期」って聞くと、みなさん何を想像しますか?

僕は未だに

間期・前期・中期・後期・終期

というのが真っ先に思いついてしまいます...

高校生物を真面目にやってたわけじゃないですが、最初に習った話なので完全に刷り込まれているのです(T^T)

まあしかし、これはほぼ分裂期に着目した細胞周期の表し方で、編入試験ではまず問われないでしょう。


では、以下もう一つの細部周期の表し方です。

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間期のところが細かく

G1期・S期・G2期

に分かれて、そのかわり前期~終期をまとめて

M期

と表します。


一応、アルファベットがそれぞれなんの略か、なのですが

G1とG2はGapのG

S期はsynthesisのS

M期はmitosisのM

です。

この中で比較的聞きなれないのはmitosisでしょうか。「体細胞分裂」という意味です、発音は"マイトーシス"。
ちなみに減数分裂」はmeiosisです。こちらの発音は"マイオーシス"(紛らわしい)


あと高校生物的によく問われるのは、細胞内のDNA量の変化でしょうか。

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こんなやつですね。

この手の問題、もちろん学士編入でも問われるのですが、使われるグラフが違ったりします。

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こっちです。見慣れている人はよく分かるし、見慣れてない人ははじめは戸惑うかもしれません。

なぜこっちか一般的になるかというと、これは実験データだからです。
対して、高校生物向けのもう一個上のやつは、あくまで理解させるための図です。

どんな実験で得られるデータかというと、"フローサイトメトリー"という機械を使います。

結構有名な実験手法だと思いますので、知らなかったという人は是非ググってください。

...まあそういうことです。



それで、じゃあこれだけ知ってればいいのかというと、編入ではここから先が本番です!

現象論にとどまらず、細胞周期の制御メカニズムがよく問われるんです(>_<)

というわけで、それについてはまた次回。